永住許可取り消し条項巡り/当事者らが署名提出
2025年02月19日 17:00 社会改正入管法、恣意的運用への懸念高まる
昨年6月、入管難民法改正案が参院本会議で可決、成立した。2027年にも開始される見通しの新制度は、税金や社会保険料の滞納、居住地の届け出を適切に行わない場合などに永住資格を取り消せるようになり、恣意的な運用への懸念の声が高まっている。
日本生まれや日本育ちの永住者とその家族たちを不安に追い込む同制度を巡り、有志の会のメンバーたちは17日、石破茂首相、鈴木馨祐法相、出入国在留管理庁・丸山秀治長官宛てに要望書を提出した。同会は、20代~30代を中心に、当事者やその家族、友人たちで構成されている。
要望書は、昨年6月に国会で、「永住許可の取り消しを行う場合、永住者の利益を不当に侵害することのないよう…具体的な事例についてのガイドラインを作成し周知するなど、特に慎重な運用に努めること」との付帯決議が可決されたのを受け、当事者や家族の声をガイドラインに反映するよう求めたもの。具体的には、取り消しを検討する場合に、▼不安定な経済状況や心身の健康状態、家庭環境に対しての十分な配慮、▼来歴や言語能力、国籍を持つ国の社会情勢など、国籍を持つ国における生活能力と安全性の考慮、▼多様な背景を持つ当事者が、ガイドラインの作成に関わり、意見を反映させることができる場の設置などについて、ガイドラインに盛り込むよう求めた。
またこれと関連し、有志の会では昨年10月からオンライン署名サイトを通じて集めた署名1万1399筆を出入国在留管理庁に提出した。
提出後の会見で発言した有志の会のハンナさん(仮名、30代)は、日本生まれ、日本育ちで永住者資格を持つ。ハンナさんは「永住許可の取り消しは、公租公課の『故意』の未払いが対象となるというが、『故意』は何をもってどのように判断されるのか、不安な気持ちが拭えない」と心情を吐露したうえで、当事者らに対する配慮を、運用ガイドラインに明記してほしいと訴えた。
永住者の親を持ち、自身は日本国籍だというマリさん(仮名、大学生)は、20年以上日本で共に暮らしてきた家族が「バラバラになってしまうのではないか」との危機感を示した。また、新制度の成立以降、「永住者の公租公課の不払い率が日本人より高いという根拠のないデマ」が広まったことで、ネット上では、永住者を含む外国ルーツを持つ人々へのヘイトスピーチが増加していると指摘した。
高齢期を迎える永住者の親族をもつ荒木生さん(29、大学院生)は、現在日本の永住者数が約90万人(うち未成年は約11万人)いることについて触れながら、「日本で生まれたり育ったりした若者たちは、日本社会にすでに定着しており、将来は日本社会を支える存在となっていくはずだ。(取り消し条項は)そういった若者や大人たちの立場を、不安定にするもの」だとして、問題解消のためには、世論の後押しが必要だと述べた。
(韓賢珠)