〈2024年司法試験〉/合格者たちの決意
2024年12月12日 15:36 民族教育祖国や同胞社会の力に
2024年司法試験に合格した朝大研究院の李勇紀さん(26)と李世輝さん(23)。朝鮮学校で学び、在日朝鮮人としての誇りを胸に勉学に励んできた2人の原動力は、「同胞社会を守りたい。祖国や同胞たちの力になりたい」気持ちであり、彼らの傍にはいつも支えてくれる人々の存在があった。
‟朝青の仲間たちのお陰で”
勇紀さんは東京第9初級に通った。クラスのリーダー格だったという勇紀さんは、「昔はいたずら好きの悪ガキで、よく怒られていた。高学年からは落ち着いて、ソンセンニムの顔色を窺うようになった」と笑いながら母校での日々を思い返す。
一方、家庭では一度も「勉強をしろ」と言われたことがなかったが、「漢検の過去問を解くと、オモニが採点してくれ、お陰で勉強が苦にならなかった」という。初6で漢検2級を取得し、今回の司法試験でも漢字を勉強した経験が生かされた。
東京中高に進むと、高3の時に、生徒たちが高校無償化裁判を傍聴する機会を学父母たちが設けてくれた。そこで、朝鮮学校側の弁護士が、朝鮮学校の正当性を論じ、相手の主張を詰めていく姿を見て、「かっこいい。自分もあそこで、在日朝鮮人運動のために闘いたい」と感じた。
以降、弁護士になることを意識し始め、朝大進学時も政治経済学部法律学科を選択した。大学3年時の祖国講習で「弁護士になり、祖国や在日同胞を手助けしたい」と人生観が固まり、法科大学院進学を決断。「両親に誇れる選択をしたい」という思いもあった。
大学院での最初の1年間は、朝大で生活。「日中は各々の学校で勉強し、夜になると皆が帰ってくる。集まって互いを労いながらお酒を飲んだり、たまに一緒に遊びに出かけたり、メリハリのある日々だった」(勇紀さん)
また、試験勉強に励む一方で、地元である朝青中杉支部の活動にも活発に参加し、訪問事業や母校での行事に美化活動など、朝青活動に勤しんだ。「朝青活動が本当に楽しくて、参加するたびに頑張ろうと思えた。朝青の仲間たちのお陰で試験合格を達成できた」と感謝を口にした。
勇紀さんは、「同胞社会では権利闘争が常なので、専門家が要求されているに違いない」とし、「契約や相続の問題など、同胞同士だからこそ分かることも多い。同胞たちが気軽に相談してくれる、身近な弁護士になれたら」と語った。また、「祖国の法整備においても、在日同胞側から貢献できることがあれば実践していきたい」と前を見据えた。
同胞第一主義を目標に
大学院への進学後、2年足らずで、最短の合格を掴み取った世輝さん。そんな彼にとって受験勉強期間、友人の存在が大きな支えとなった。
西播初中、神戸朝高に通った。高級部時には朝鮮創建70周年と4.24教育闘争70周年を迎えた。それに伴い、「ウリ民族フォーラム2018 in兵庫」も開催された。
当事者として高校無償化運動にも活発に参加。この頃から同胞たちを取り巻く法律的な問題について考えるようになると、高3時に県内の朝鮮学校への補助金が削減された事実を受け、自らが弁護士になることを視野に入れた。
これらの経験を重ねて、高級部では学級の絆が一層固いものとなった。「当時の盛り上がりが凄かった。トンムたちと行った公演で、『20年後の未来は自分たちに任せてください』と叫んだ記憶は今でも鮮明だ」と話す。
ストイックな世輝さんはこの間、毎日平均10時間の勉強を欠かさなかった。この習慣は、大学院への進学を決めた頃から変わらず、勉強計画の立て方は徹底している。
一方で、「メンタルがあまり強くなく、勉強漬けの日々に参っていた頃もあった」という。
しかしそんな時、仲間たちの存在が支えてくれた。地元の神戸や朝大で出会った仲間たちからのこまめな連絡や、食事への誘いなどが、何よりも助けになった。
「間違いなく言えることは、自分のためだったらもっとしんどかったということ。周りの人達の支えがあって、同胞たちのためにという思いでやってきたから、苦しい日々も乗り越えることができた」(世輝さん)
また、家族や民族教育への恩は胸に刻んでいる。「代々教員を務めてきた家族たちの姿を見て育ったから、自然と同胞社会のために何かをしたいという気持ちが芽生えた。民族心を育み、弁護士を志すきっかけをくれたのは民族教育だ」と話した。
目指すのは「イルクン」の様な弁護士だという。「地域の活動にも顔を出し、活動家たちと同じ目標や人生観、志向を持った弁護士が自分の理想」とした。また、「同胞たちが抱える問題は、弁護士が解決できることも多いのではないか。同胞第一主義を目標に、同胞たちが頼ってくれる弁護士になる」と力を込めた。
(朴忠信)