2012/01/13

　「いまだに信じられない。信じたくない」。黄海北道沙里院市・嵋谷協同農場の管理委員長ソン・ユンヒさんと再会した。前回の取材は、金正日総書記が農場を現地指導したというニュースが労働新聞に載った翌日だった

▼「嵋谷」は、国内で最も有名な農場の一つだ。稲作における収穫高は群を抜いている。他の農場はそれを目標に頑張る。総書記はここを何度も訪れた。そのたびに、農作業について説明するソンさんの写真が新聞に掲載された。全国で最も顔が知られた管理委員長だろう。総書記と一緒にいる時の彼女の笑顔が印象的だった

▼なぜ、管理委員長の手がこんなに冷たいのか。身体を大切にしなさい―冬の季節に訪れた総書記は、そう言って、彼女の手を包むように握ったという。慈愛に満ちた素朴な方だったと総書記の面影を偲び、ソンさんはむせび泣いた。総書記の現地指導は、その場にいる人間に笑みを与えた。そこには「作為」や「演出」などなかった

▼悲報に接し、人民が流した涙。朝鮮での生活体験がない人々に、その意味を伝えることは容易でない。ソンさんも言葉で説明しようとはしなかった。彼女は、ただ決意を述べた。「今年は、去年を上回る収穫高を達成する」。生涯の最期まで続けられた総書記の現地指導は、全国を一つの絆でつなげていった。そして、この国の人民を強くした。（志）