“素直な表現に感動”/第50回学美の反響
2024年09月03日 14:11 イベント案内 文化 お知らせ在日朝鮮学生美術展(以下、学美)は朝鮮学校に通う児童・生徒たちの発表の場として昨年、1970年の初開催から50回目の節目を迎えた。第1回の応募総数が1153点だったのに対し、現在は毎回1万2千点以上の作品が応募されている。また、09年からは学美に感銘を受けた日本人市民たちが中心となって山陰展が開催されてきた。
子どもの思いを届けたい/山陰展で
山陰展は09年の鳥取展を皮切りに、学美の地方巡回展として鳥取県、島根県内で開催されてきた。日本人市民が中心となる学美・山陰地区実行委員会は、同展を「(山陰地方で)在日コリアンが抱いていた民族教育の希求や思い、その歴史や朝鮮学校の実情に触れることのできるもの」と位置づけ、「美術展を通して、地域の人権文化の確立と、多文化共生社会の実現を目指したい」との思いで企画・運営している。
その実行委が主催した昨年度の鳥取米子展は3日間という会期ながらも約500人の来場者を記録した。児童・生徒たちの率直かつ自由闊達な表現が特徴といえる学美。その作品群に触れた市民たちの感想を紹介する。
「子どもたちの素直な気持ち、訴えたいこと、描きたいことが絵全体で表されていて心を大きく動かされた。…自分の思うままに描かれた作品たちは自分の心を洗ってくれた。自由に描いていい、ということは子どもたちをむしろ困らせてしまうのではないかと思ったが、『こんなの描いていい?』『こんなのでもいい?』と聞きながらも作品を作り上げた子どもたちの子どもらしさに、胸打たれた。本当に観に来ることができてよかった。朝鮮学校の子たちと一緒に絵を描きたいと思った」(県内在住、20代)
「表現力、発想力、想像力が豊かで自らの思いがアートに込められており、心を打たれた。描いた生徒がどんな思いをしているのか、どんなことを考えているか、社会をどう見ているかなど考えさせられた。じっくりと作品、そしてタイトルをみて、『○○という気持ちを表現し、伝えたかったのではないか?』と自然と考えるなど、作品に引き付けられる自分がいた」(県内在住、40代)
「クスっと笑ってしまうような作品、技法に感心する作品、見ていて苦しくなる作品、多種多様な自分の感情の変化が非常に忙しかった。どの作品を見ても自分自身に訴えかけているように思えた。…自由に、のびのびと描くことを評価してもらえる、受け止めてもらえる子どもたちを羨ましく思った。…朝鮮について勉強を始めたばかりだが、もっと学んで、子どもたちがのびのびとし続けられる環境を作り出せる大人になりたいと思った。貴重な経験をありがとう」(県内在住、20代)
「学齢が低い時は、自分の目で見たものが描く対象になっているが、学齢が上がるごとに自分自身をもう一人の自分が観て描いているようだ。日本ルーツの子が描く自画像と決定的に違うのは、自分が何者なのかという根源的な問いの深さだろうと思う。背景に多い『海』は深く思考を沈潜させていく象徴なのだろうか」(県内在住、50代)
「今回、朝鮮学校の学生たちの美術作品を参観して、作品のクリエイティブさに驚いた。その作品たちは描いてくれた子どもたちだけの表現で、何ものにも囚われない子どもたちの感情を感じる作品だった。特に朝鮮学校の子どもたちの視点から、もう一回、世界を、日本社会を見たような気がした。…心から来てよかったと思わせるようなイベントだった」(県内在住、20代)
「初級部1年生の絵はタイトルを読むだけでも楽しく、自然と笑顔になる。3年生にもなると各自の個性が作品に表れてきて、才能の兆しが見える絵もあり、子どもの内面的成長を感じた。中・高級部美術部の作品は圧巻!専門的かつ自由な発想を大切にした美術教育がなされていることに驚いた。公開授業などと共に、朝鮮学校の教育がどのようなものなのかを広く知らしめる企画・活動として今後も続けてほしいと思った。来年は知人も誘って来たい」(県内在住、60代)
「絵画は自己表現、自由であり、心の中を表すものである—このことを改めて痛感した。…心の空白を自由に表現してあり素晴らしい。ぜひ、(日本の)幼初中学校に案内をされ、多くの同世代の子どもたちが観ることができるようにしていただきたい」(県内在住、50代)
(朝鮮新報)
今後の展示予定
今年度の第51回学美の予定は次の通り。
9月4日(水)〜9月8日(日) 神戸展(兵庫県立美術館 原田の森ギャラリー)
9月11日(水)〜9月16日(月) 大阪展(東大阪市民美術センター)
10月3日(木)〜10月5日(土) 福岡展(九州初中高)
10月15日(火)〜10月20日(日) 京都展(京都市京セラ美術館別館)
11月27日(水)〜12月1日(日) 東京展(埼玉会館)
12月4日(水)〜12月8日(日) 千葉展(千葉市美術館市民ギャラリー)
12月19日(木)〜12月20日(金) 西東京展(たましんRISURUホール)
2025年
1月11日(土)〜1月14日(火) 神奈川展(川崎市教育文化会館)
2日7日(金)〜2月9日(日) 北海道展(札幌市民ギャラリー)
2月28日(金)〜3月2日(日)山陰展(島根県立美術館ギャラリー)
3月5日(水)〜3月9日(日) 東海展(刈谷市美術館)
※広島展の開催情報は学校Facebookにてお知らせ予定
※2025年6月のセッピョル学園にてセッピョル展を開催予定