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アボジの思いを心にとめて/金サラン

2024年08月23日 11:11 それぞれの四季

「そんなふうに育てた覚えはない」。震える父の声に、後悔や不安よりも心の奥底にしまっていた思いが大声になって出た。「パパのことが大好きだから、もうルーツを隠したくないし、向き合っていきたいねん」。

朝鮮名を名乗り、様々な民族運動に参加するようになったことが、とうとう父の知るところとなった。父は、自分が受けた差別を引き継ぐことのないよう日本人として育ててきた娘がその思いに反したことに憤怒し、右傾化する日本社会で朝鮮人として生きることがどれほど大変かを説いた。平行線の口論はいつしかお互いの涙とともに流れ行き、ふと父が「死んだばあちゃんは喜んだと思うよ」とつぶやいた。

初夏の陽気漂う日、大好きなポピー畑に父を誘った。私はチマ・チョゴリを着て。人前で、父に怒られることを覚悟したが、「だんだんチョゴリが似合うようになってきたね」とはにかみながら言う父のしなやかさと強さに感動した。写真家として50年私たち家族を支えてきた父。ファインダー越しに今の私はどう写っているかな? あなたの愛をたくさん受けて、あなたの子として、ひとりの朝鮮人として、人として、いのちいっぱい幸せに生きていくよ!とつぶやいた。

私を大切に守ろうとした父の思いを心にとめ、社会のあらゆる差別とたたかい続けたい。「わたしの朝鮮」を求め続けたい。

(兵庫県尼崎市在住)

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