大阪で「慰安婦」被害者の証言集会
2013年05月27日 10:05 主要ニュース「私は日本軍の奴隷だった」
日本軍「慰安婦」問題の解決を求めて、「何度でも語る 歴史の事実はこれです」と題した集会(主催=日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)が25日、大阪市内で開かれ、南朝鮮から来日した日本軍「慰安婦」被害者である金福童さん(87)と吉元玉さん(84)2人が当時の過酷な体験について証言した。約500席の会場は満席となり、ロビーにも人があふれた。
日本軍「慰安婦」被害者の2人は18日から福山、沖縄、広島、岡山での証言集会を経て来阪。24日には東大阪朝鮮中級学校を訪れ、生徒たちと交流した。26日に奈良で最後の証言集会を開き、一週間以上にわたる滞在日程を終えた。
一方、日本政府は24日の閣議で、日本軍「慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」(1993年)について、安倍内閣として継承する内容の答弁書を決定した。
平和への思い訴え
集会に先立ち、すでに亡くなった数多くの日本軍「慰安婦」被害者たちを偲んで、参加者全員が黙祷した。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの共同代表である方清子さんが開会のあいさつを行った。
方さんは「かつて『強制連行はなかった』などと『慰安婦』問題を否定して被害者たちを苦しめた安倍政権が復活し、戦争をできる国をめざす動きが活発化している。このような状況の下、今回、被害者である高齢のハルモニたちは、『日本が再び戦争への道を歩んではならない』というメッセージを日本の市民のみなさんに訴えるべく、各地での証言集会を行おうと決意した」と話した。
金福童さんは、14歳の時に日本の植民地支配下の朝鮮で軍需工場に連れて行くと騙され、「慰安婦」としてアジア各地の戦地を連れ回された悲惨な体験について証言。「私は日本軍の奴隷となって散り散りに引き裂かれた」と嘆いた。
金さんは、「日本政府は過去に引き起こしたすべての犯罪について謝罪しなければならない。とくに私たちの同胞である在日朝鮮人に対する差別をなくしてほしい」と訴えた。
また、「『慰安婦』制度は必要だった」などと発言(13日)した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長について「妄言を言う人がどうして市長でいられるのか」と訴えると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
吉元玉さんも、「戦争が起こると、民衆、とくに幼い子どもや女性たちが大変な苦労の中で暮らさなければならない。この先、戦争は絶対にあってはならない」と、平和への切実な思いを訴えた。
「誘拐」も犯罪
被害者の証言に続いて、日本軍「慰安婦」問題の第一人者である中央大学・吉見義明教授が講演を行った。吉見教授は1991年、当時の防衛庁防衛関係図書館で、日本政府が慰安所の設置、運営に関与していたことを示す資料を発見。以来、被害者の聞き取り調査や「慰安婦」問題解決のためのさまざまな活動を行ってきた。
吉見教授は、橋下市長をはじめ、今の安倍政権、そして多数のメディアが、慰安所での強制(強制使役)の問題についてはふれずに「軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行」の有無だけを問題視し、日本軍「慰安婦」問題の本質をすり替えていると指摘。「海外への連行形態について、橋下市長も安倍首相も暴行・脅迫を用いての『略取』のケースのみを問題視しているが、戦前の日本、朝鮮、台湾に施行されていた刑法第226条によれば、騙したり甘言を用いて連れて行く『誘拐』や『人身売買』も『略取』と同じく犯罪として規定されていた」と述べた。
また、連行形態にかかわらず、軍の慰安所で行われたことが強制であったことが最大の問題であり、「軍慰安所は文字通りの性奴隷制度だった」と指摘した。
集会ではまた、シンガーソングライター・李政美さんとパンソリ奏者・安聖民さんによるうたのステージが披露された。途中、吉元玉ハルモニが民謡に合わせて踊りながらステージに再び登場し、会場から温かい拍手が送られた。
続いて韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香共同代表が講演を行った。尹共同代表は日本軍「慰安婦」問題が解決されるためには▼加害国からの直接の謝罪と賠償▼被害者の名誉回復が必要だとしながら、そのためには過去の歴史をわい曲してきた日本社会が変化すること、またそのような状況を許さないといった国際世論を醸成しなければならないと述べた。
この日、(金福童さんと吉元玉さんが2012年3月に立ち上げた)戦時性暴力被害者を支援する「ナビ基金」にもカンパが寄せられた。
橋下市長と面談せず
金福童さんと吉元玉さんは橋下徹大阪市長と面談し、「慰安婦」問題をめぐる発言の撤回と謝罪を求める予定だったが、橋下市長が発言を撤回しないとの意向を示したことなどを受け、24日午前に予定されていた面談を同日に急遽取りやめた。
橋下市長は翌25日、在日米軍に風俗業の活用を求めた発言について撤回したが、「慰安婦」問題をめぐる発言については未だ撤回していない。
(金里映)
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