「荒川日朝婦人の集い」、日本人遺族の墓参団関係者が発言
2013年03月05日 15:51 主要ニュース「温かく迎えてくれた朝鮮の人たち」
「胸つまる思い」
「荒川日朝婦人の集い」(2日、サンパール荒川)では、「北朝鮮地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会」(北遺族連絡会)の事務局長を務める太西るみ子さんの訪朝報告が、参加した多くの人々の心を打った。
日朝間には国交がないため、日本の敗戦による引き揚げの途上に38度線以北で命を落とした日本人の遺骨は70年近く経った今日まで現在の朝鮮の各地に眠っている。
太西さんは数年前から日本人遺骨墓参に携わるようになった。昨年はじめて日本各地の遺族とともに朝鮮を訪問し、墓参や遺骨収容を行った。
太西さんは、朝鮮側が非常に温かく迎え入れてくれたこと、また丹念に日本人遺骨の調査を行ってくれたことや遺族一人ひとりの要望を聞き入れて希望の行き先にも連れて行ってくれたことに言及した。さらに、朝鮮の人々の人間味あふれる対応に胸を打たれたというエピソードについて語った。
「墓参団のメンバーのうちの一人が末期ガンを患っていた。その方は自分が死ぬ前にどうにかして朝鮮(元山)で亡くなった父の遺骨を持って帰らなければならないという思いでいた。朝鮮側の調査によると、元山は(朝鮮戦争時)米軍の空爆に遭ったため調査が難航し、一週間探したものの遺骨が見つからなかったという。謝ることなど何もないというのに、朝鮮の担当者はわれわれに向かって謝ってくれた。そして、『朝鮮の地で亡くなったあなたのお父さまは、大地となって私たちを支えてくれています。ありがとうございます』という言葉をかけてくれた。日本から訪れたみなが、胸つまる思いになった」
メンバーの父の骨は見つからなかったが、朝鮮の担当者のはからいで元山の街が見渡せる港へ出向き、慰霊の儀を執り行ったという。
太西さんは一方で、日本のマスコミが伝えるいわゆる「北朝鮮像」に異論を投げかけた。「テレビでは(朝鮮が墓参団を受け入れたことについて)『外貨獲得のため』だとか、『日本から経済支援を引き出すため』などと報じられたが、私は日本人として腹立たしいばかりである。朝鮮の人たちは無償で遺骨の調査を行ってくれた。私は日朝国交正常化が実現されるまで、朝鮮を行き来してこの活動を続けていきたい」
女性同盟荒川・町屋分会の金景淑さん(63)は、「大西さんの話を聞きながら、テレビなどでは報じられない祖国の姿を感じることができた。大西さんは朝鮮と縁もゆかりもなく、歴史のこともよくわからないと言っていたが、そんな彼女が直接朝鮮に行って現地で見聞きし人々と接する中で、日本の報道とはまったく違う朝鮮の姿を知ったということに感銘を受けた。またそういった話を日本の人々に語りかけてくれたことが嬉しかった」と話した。
「正しい姿」見つめ
「荒川日朝婦人の集い」は今年で結成36年となる。毎年欠かさず新年会が行われてきた。
長年携わってきた女性同盟のメンバーによると、かつては朝・日の女性たちで新年会の料理を手作りしていたこともあったという。「普段からの交流の積み重ねがあった。1世同胞たちの時代から育まれてきた日本の人々とのつながりがあったからこそ、下の世代もそれを受け継いでこられた」(町屋分会・朴徳恵さん、60)。
今年は日本当局による総聯や朝鮮学校に対する不当な弾圧、そして朝鮮に対する敵視政策の度合いが高まるといった厳しい情勢の下で、新春の集いを開催できるのかどうか懸念する声もあったというが、初のチマチョゴリ・ファッションショーが行われるなど多彩な内容をもって例年通り開催された。
この日の集いには、地域の日本人士ら約20人が来賓として参加した。
来賓を代表してあいさつを行った荒川区の副区長は、「荒川区では日朝婦人の集いが長年催されてきた。今、日朝関係は非常に厳しい状況にあるが、私はこのような交流を続けていくことで、いつか(日朝関係が)花開く時が来るものと思っている。地域で共に暮らす者同士で交流し違いを認め合うことで、互いの『正しい姿』が見えてくるのではないか。わが荒川区では(日本人と在日朝鮮人が)互いに理解し合える関係のベースがきちっと出来ている。私はそれを誇りに思う」と述べた。
続いて、日朝友好促進東京議員連絡会事務局長である荒川区議会議員があいさつした。
「私はすべての核に反対する立場である。朝鮮が核実験を行ったことを大変残念に思う。しかし、なぜ朝鮮だけが制裁を加えられるのか私には理解できない。
これを認めるのであれば、米国をはじめとするすべての核保有国に対しても同じ対応をすべきではないか。ましてや核実験が行われたことによって、朝鮮学校の子どもたちに危害が加えられたりするのはとんでもない話である。朝鮮学校の子どもたちを守るためのたたかいを、われわれはこれからもずっと続けていく」
日本人遺族の墓参
昨年8月、日本の敗戦前後に朝鮮半島北部で死亡した日本人の墓参や遺骨収容に向けた調査のため、朝鮮北東部の清津市およびその周辺から引き揚げてきた人々からなる日本の民間団体「全国清津会」のメンバー4人が初めて朝鮮を訪れた。10月には平壌市郊外の龍山で暮らした日本人たちの団体(龍山墓地墓参団)の墓参が実現した。
同月18日には「全国清津会」をはじめ遺族たちからなる「北朝鮮地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会」(北遺族連絡会)が発足し、同月22~30日と11月27~12月1日に墓参が実施された。
次回の墓参は今年4月に実施される予定。
(金里映)