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核対決の発端は米国の威嚇

2013年02月22日 18:07 主要ニュース 朝鮮半島

「朝鮮半島非核化の終焉」/第3次核実験に至る歴史的経緯

朝鮮の人工衛星打ち上げに対する国連安保理制裁決議の採択を主導した米国は、朝鮮半島とその周辺で核戦争を想定した南との合同軍事演習を強行し、緊張を激化させている。朝鮮に照準を合わせた軍事的圧力の増大は米国が主張するような「北朝鮮の挑発行為」に対する強硬対応などではない。米国の核威嚇は、朝鮮の衛星打ち上げや核実験実施の遥か以前から始まっていた。

戦時に「原爆使用」公言

1950年代の朝鮮戦争で米国は核兵器による攻撃を検討した。50年11月30日、トルーマン大統領は朝鮮戦線での原爆使用について公言し、同日、米戦略航空隊に「原爆投下のため出撃準備」を指示した。その年の12月、マッカーサー米極東軍司令官は「朝鮮北部に東海から西海に至る放射能ベルト地帯を形成する。そこでは60年あるいは120年の間、生物が蘇生することはないだろう」と述べている。

朝鮮戦争爆撃

米国は朝鮮戦争で核兵器による攻撃を検討した。(写真は元山の精油所に対する爆撃)

米国の「原爆恐喝」によって朝鮮半島では北から南に逃げる「原爆避難民」が発生した。その結果、数百万人に及ぶ家族が南北に生き別れになった。

53年7月27日に停戦協定が結ばれたが、米国は戦争再発防止のため武力増強を禁止した協定の第13項、朝鮮問題の平和的解決を規定した第60項などを蹂躙し、形骸化させた。そして朝鮮半島に核兵器を持ち込んだ。

当時の核搬入過程には日本の問題が絡んでいる。50年代、第五福竜丸被爆事故などを機に日本で反核運動が高まり、親米政権の維持が危うくなると、米国は日本に配備していた核兵器を南朝鮮に移動することにした。 57年に米国初の戦術核兵器が日本から南朝鮮に搬入、配備された。

核戦争想定した演習

南朝鮮に対する米国の核兵器配備は、その後も増大し70年代半ばに1,000発を超えたといわれる。

米国は60年代末から南朝鮮に配備した核兵器の使用を想定した軍事演習を南朝鮮と合同で行っている。 ハワイ、グアム、沖縄の空軍基地と沖縄米海兵隊基地の米軍、駐南米軍と南朝鮮軍が参加した69年の連合戦争演習「フォーカス・レティナ」に始まり、「フリーダム・ボルト」軍事演習を経て、76年からは世界最大級の合同核戦争演習「チームスピリット」を実施した。

「チームスピリット」は92年に一度中断されたが、93年に再開、94年には「連合戦時増員演習」に名称が変更され、02年からは野外機動訓練と特殊作戦を軸とする「フォールイーグル」演習と結合された。08年には「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」合同軍事演習と改称されている。

米南合同海上訓練

米軍と南朝鮮軍の軍事演習には核先制攻撃を想定した作戦計画が適用されている。(連合ニュース)

毎年3月に行われる「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」について米、南の軍当局は「攻撃的性格を帯びない通例の防衛訓練」と説明しているが、実際は、朝鮮を先制攻撃して占領するための戦争シナリオである「作戦計画5027」などに基づき軍部隊が展開されている。

演習では南に駐屯する米軍と海外から派遣される米軍の増員部隊、南朝鮮軍の統合、前方移動に始まり、北への「進撃」と「占領地域統治」に至る作戦計画と教範が実戦の雰囲気の中で遂行されている。

 「核先制攻撃」の対象に

朝鮮は、米国の核脅威を無くすための努力を続けてきた。50年代後半から対話と交渉を通じた非核地帯創設を模索した。85年には核拡散防止条約(NPT)に加盟、国際法に基づき核の脅威を除去する努力を並行させた。

90年代以降、核問題をめぐる朝米対話が始まり一連の合意が生まれたが、2001年に発足したブッシュ政権は、それまでの合意を一方的に破棄し、02年1月の一般教書演説で朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ。

この年、米国防省が議会に提出した「核態勢見直し」報告書(NPR)は、朝鮮など7ヵ国を「核先制攻撃」の対象とみなし、地下施設など特定の対象物や戦闘で使用するための小型核兵器開発の必要性を説いた。核兵器をこれまでのような抑止力としての「最後兵器」ではなく、実際に「使える兵器」として位置付けた報告書は、非核国に対して核攻撃を行わないというNPT体制の前提をも否定するものであった。

すでに南に大量の核兵器を配備している米国が報告書で朝鮮を「核先制攻撃」の対象に指定したことで、朝鮮半島における核戦争の危機が一段と高まった。実際、報告書は、核兵器を使用する状況として「北(朝鮮)による南への侵攻」、「イラクによるイスラエルおよび周辺国への攻撃」など具体的な事例をあげていた。

報告書の存在が明らかになった翌年の03年3月、米国から朝鮮とともに「悪の枢軸」と名指しされたイラクで戦争が始まった。この年の1月、10年間中止していたNPT脱退の効力を発生させた朝鮮は、本来エネルギー生産を目的に創設した平和的な核動力工業の用途を「自衛的核抑止力の強化」に変更することを決断した。3年後の06年10月、朝鮮は初めての核実験を行った。

朝鮮の自衛的措置

米国の核威嚇、核戦争挑発行為が朝鮮に核兵器を持たせたといえる。

「核体制見直し」報告書が示すように、米国の軍事ドクトリンのベースにあるの先制攻撃論だ。オバマ政権も09年6月、李明博政権と「有事の際に核兵器を使用する」とした「拡大抑止力」の提供に関する共同文書を作成、発表している。

自国を敵視する米国の政策が続く限り、朝鮮は戦争抑止力としての核兵器を手放すことができない。

13年1月、朝鮮は人工衛星打ち上げを制裁対象とした国連制裁決議を米国の敵視政策が極限点に達したものと判断、「非核化会談の終焉」を宣言し、3回目の核実験を行った。朝鮮の行動は自衛的措置であるが、米国は現在も軍事演習を繰り返し、朝鮮に対する核攻撃が可能であることを、言葉でなく威嚇行動で示している。

作戦計画5027/o-plan(operation-plan)5027

1974年に初めて作られた対朝鮮侵略戦争計画。94年に作成された「作戦計画5027-94」で朝鮮の体制崩壊を想定する内容が追加され、以降2年ごとに補充更新が行われている。

「5027」は当初、「休戦ライン防御」に重点を置いていたが、94年からは朝鮮の東海岸地域と西海岸地域に上陸して平壌を占領する攻勢作戦に転換された。「5027-98」ではすでに先制攻撃に関する内容が盛り込まれた。その後ブッシュドクトリンに基づく「核態勢見直し」などによって「核先制攻撃」までも可能とした。

近年は、米軍と南朝鮮軍がトマホークなど精密ミサイル兵器と機動性に優れた特殊戦司令部、精鋭部隊を投入し、朝鮮側戦略拠点の「早期占領」を目指す作戦を立案している。2010年の時点では、「5027」によって米軍が戦争勃発後90日で69万人の兵力、空母5隻、艦艇160隻、航空機2,500機を朝鮮半島に投入することになっている。

現在、米軍と南朝鮮軍が行う合同軍事演習には「5027」などの作戦計画が適用されている。朝鮮半島と関連した作戦計画には「5027」以外にも◆朝鮮の核施設などを標的とする精密打撃計画「5026」◆西海における武力衝突など戦争の挑発と拡大をねらった「5028」◆「内部崩壊」を仮想した「5029」◆偵察機の領空侵犯、海兵隊の展開などで人民軍の「弱体化」、「内紛」を誘導する「5030」がある。

(金志永)

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