〈取材ノート〉日本の良心と共に
2013年02月15日 16:19 コラム都教委が独自に発行する高校日本史の副読本で、関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺に関する記述が「修正」されることになったとの報道にふれた。「虐殺」→「命が奪われました」と書き換えられるということだが、日本の加害の実態が矮小化されてしまうのではないだろうかと、大きな不安と憤りを覚えた。
そんな中、ふと2009年の夏のことを思い出した。8月、荒川河川敷のすぐ傍に、関東大震災時に虐殺された朝鮮人の追悼碑が日本の人々によって建立され、その取材にあたった。
かつての惨劇を二度と繰り返すまいという良心を持って活動する市民グループの働きかけによって、19年の歳月を経て碑は完成した。
追悼事業に携わる日本人に話を聞いた。「何もしなかったら、(虐殺事件を)なかったことにしたい人たちの思うつぼ。私自身、歴史の隠蔽に加担してしまうことになる」と危機感を募らせる姿が、強く印象に残っている。
今月7日、墨田の朝・日友好親善新春の集いを取材した。下町ならではの温かい雰囲気、そして地元の朝鮮学校を中心として連帯の輪を広げている同胞、日本人の和気あいあいとした姿があった。
ある日本人は、「(虐殺に関する記述の)書き換えは間違っている。言葉を濁してはいけない。過去の記憶がだんだん薄れてきている今だからこそ、本当のことを言わなければならない」ときっぱりと話した。その言葉を聞き、われわれ在日朝鮮人が、日本の良心と声を合わせ、粘り強く真実を語り継いでいかなければならないという思いを強くした。(里)