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2023年10月29日 08:00 取材ノート

「運動の高まりが必要だ」。群馬追悼碑をめぐる追加裁判の訴状を提出した下山順弁護士のひとことが、胸に刺さった。10月11日、県立公園「群馬の森」にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑を存続させるための裁判がふたたび始まった。2014年に始まった前回の裁判は、22年の最高裁棄却によって追悼碑の存続を求める原告側の敗訴が確定し、終結した。新たな法的根拠を持って始まった今回の追加裁判の見通しも決して明るくはない。それでも。

訴状提出直後、記者会見への道すがら、下山弁護士は判決の不当性や歴史修正に対する危機感、追加裁判が持つ意義について話してくれた。静かでありながら力強いその言葉からは差別を許さず、不当なものには断固として抗う人の、生き方の一片が見えていた。一人だけではない。群馬追悼碑を守るための闘争は、同じように歴史修正の波に抗い生きる人々によって続いている。

「運動の高まり」とは、闘う人の声を聞いた一人ひとりが賛同し、手をつなぎ、ともに行動することだと思う。そのためには事実を正確に捉え、最前線で闘う人々の覚悟を伝える報道の力が必要不可欠だ。

私も、不正義に声をあげ、明日を変えるために記者として、朝鮮人として生きようと決めたのではなかったか。生きるだけで大変な毎日だとしても、できること、やりたいことは多く残されている。

歴史を記憶し、友好・連帯・共生を目指して建てられた追悼碑を守るための新たな一歩が踏み出された現場で、記者としての自らの生き方を再確認した。

(海)

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