「虐殺否定論」
2023年09月25日 12:37 春・夏・秋・冬関東大震災朝鮮人虐殺100周年を迎えた9月もはや過ぎようとしている。
▼小池東京都知事が朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典への追悼文送付を今年も取りやめ、松野官房長官が「日本政府の中に事実関係を把握する記録が見当たらない」と平然と述べるのを見てあきれるしかなかった。ただ、今年は例年より多数のメディアがこのことに触れ、歴史修正主義に対して批判的な論調が目立った.▼9月1日に向けてこの間、同胞関係者や心ある日本の友人たちが互いに連帯しながら啓蒙・宣伝活動や事件の真相究明、謝罪と補償を求める活動をたゆまず繰り広げてきたのは貴重な成果であり共同の財産と言えよう。
▼歴史的に見ると、1923年の朝鮮人虐殺に対する日本政府の認識と姿勢はむしろ後退した。歴史修正主義者たちの暗躍の影響だ。荒唐無稽な「虐殺否定」論を本の出版を通じて流布したのは工藤美代子・加藤康男夫妻だが、影響はすさまじかった。横浜市副読本回収事件、内閣府HP災害報告「削除」事件、小池都知事追悼文送付取りやめ事件はその典型的な例である。
▼「虐殺否定」論の本質と巧妙な手口を余すところなく暴いた本がある。「トリック-『朝鮮人虐殺』をなかったことにしたい人たち」(加藤直樹著)だ。虐殺否定論とは認識の誤りではなく、人をだます目的で仕掛けられたトリックであることがよく分かる。鋭い分析と豊富なデータで「理論武装」するのに大いに役立つ良書だ。(益)