【連載】光るやいのちの芽~ハンセン病文学と朝鮮人~⑨
2023年08月01日 11:45 歴史【連載】「光るやいのちの芽~ハンセン病文学と朝鮮人~」では、創作を通じ希望や連帯を希求し、抵抗としての文学活動を展開した朝鮮人元患者らの詩を復刊した詩集「いのちの芽」から紹介していく。(書き手の名前は詩集に掲載された日本名表示のママ)
奥二郎 1930年、神奈川県生まれ。40年に多磨全生園に入園。「灯泥」同人。
景色
わずかな陽だまりの中で
私は
ながい間
佇んでいました
遠く
夕焼は音もなく燃えつづけ
だらだらの狭い路が
どこまでもつづいて
赤と
青とに染められた山脈が
くっきりと美しく
やがて
合歓(ねむ)の葉が
一枚 一枚
たたまれてゆく時
その花は
ほんとうに
匂いはじめたのです
だが
そんなに静かな景色が
いつのまにか
私の眸(ひとみ)の中で
歪みながら
くずれてゆくのです。