〈取材ノート〉たたかう者の歌が聴こえるか?
2013年01月25日 18:38 コラム現在公開中の映画「レ・ミゼラブル」を観た。うわさには聞いていたが、あらかじめタオルを持参しておいて正解だった。終盤では嗚咽にも近いような声で泣きじゃくってしまい、今となっては隣席の人に申し訳なかったと反省している。
原作であるヴィクトル・ユーゴーの小説「Les Miserables」は、約150年前、格差と貧困がはびこるフランスの社会、民衆たちの悲惨で「無情」な生活が描かれている。映画のクライマックス、民衆らが革命のために立ち上がる場面は圧巻で、多くの感動を呼んだであろう。明日への希望を信じ、一人また一人と民衆たちが集うシーンはまさに「嗚咽」の瞬間だった。その場面で歌われた、この映画のメインソングのひとつである「民衆のうた」の歌詞「たたかう者の歌が聴こえるか?」が頭から離れない。生活の中から革命のために生まれたその歌は、人々の心を奮い起こし、人々の声を集め束ねる、歌本来が持つ力を見せつけるものだった。
今年に入ってもう一つ、歌でたたかう在日朝鮮人を描いた演劇「歌姫クロニクル」を鑑賞した。民族の尊厳を守るため、歌うことでたたかい続けた伝説のバンド「ナビ&パルチザン」は、日本政府の抑圧の下に屈してしまう。しかし、彼女たちがまいた種に、次の世代がしっかりと水を与えれば、いつでも花を咲かせて、また立ち上がることができる。そんな希望を与える作品だった。
歌、文化、芸術には、絶望に陥った人をどん底から救い上げる力がある。今なおたたかい続けなくてはならない私たち在日同胞たちを鼓舞するかのようなこの2つの作品に出会えたことに感謝する。(梨)