性的マイノリティと性差別撤廃部会の活動(下)
2023年05月01日 09:00 社会「痛み」への想像力を
在日本朝鮮人人権協会では、すべての同胞たちが豊かに暮らせるための活動に熱を注いでいる。昨年7月に行われた総会を機に協会では、障害者や性的マイノリティなど、同胞社会の中でも弱い立場に置かれやすい同胞の人権問題に取り組み、だれもが生きやすい同胞社会づくりにさらなる力を入れていくとしている。
多様な性を持った同胞の居場所を提供するため日々奮闘する人権協会と、当事者の声を2回に分けて紹介する。
「希望感じた」
「『普通』に生きたかった」。小さな声が賑やかなカフェに重く響いた。金さん(仮名)。自分の性を見つめ続け「多様性」がうたわれる社会を問うてきた。
生まれた時に割り当てられた性は女性。自認する性別はノンバイナリー(※)に近いが、表現したい性は男性だという。活発な性格で、運動が好きだった。初級部から大学まで朝鮮学校に通い同胞社会のなかで生きてきた。
自身の性に違和感を抱いたのは高級部の頃。「自分が表現したい性は女性ではないのかもしれない」と感じた。女子生徒に好意を感じたことをきっかけに、自身の性的指向にもはじめて気づいたという。
「当時は、そのことを誰にも言えなかった。『普通の女子』として過ごすために髪も伸ばしたし男性と付き合ったりもした」。
しかし違和感は拭えず、心の中のしこりは残ったままだった。社会が作りあげた「基準」に合わせ生きようとすることは、金さんを息苦しくさせるばかりだった。その息苦しさから金さんは、いつしか同胞社会から身を引くようになった。
女性として生きることに言い知れぬ心苦しさを感じていた金さん。うつ病を患い心療内科にも通った。「消えたい」と思うことも多かった。
ところがある日