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〈高校無償化〉民族差別に対し、在日朝鮮人と共闘を/西澤清・日本退職教職員協議会事務局長

2013年01月23日 09:05 主要ニュース

「高校無償化」制度から朝鮮学校だけが排除されて3年が経とうとしている。日本政府は、朝鮮学校への制度適用の根拠となる規定を省令から削除しようとしている。この問題について、当初から朝鮮学校も制度の対象に含めるよう求めており、昨年11月23日の「東京の朝鮮学校を支援する都民集会」開催に尽力した、日本退職教職員協議会の西澤清事務局長に話を聞いた。

今後も在日朝鮮人と力を合わせたいと話す西澤清さん(日本教育会館で、1月11日撮影)

朝鮮学校を完全に排除する省令「改正」の動きは、これまでとは次元の違う朝鮮学校生徒への攻撃だ。

朝鮮学校生徒の学習権を侵害している「無償化」問題だけでなく、朝鮮学校そのものを狙い撃ちし、存続の危機に追い込む民族教育差別だと言える。

後期中等教育にあたる高等学校で学ぶ生徒への授業料無償化。これは戦後、日本の教員たちが願ってきたことだ。過去に日本教職員組合の副委員長を務めた私ももちろん、2010年度の「高校無償化」制度施行を歓迎した。

しかし、朝鮮学校生徒には適用されないという問題が発生し、仲間の一人が権利を奪われた気持ちになり愕然とした。この問題はとりわけ、子どもたちの人権である学習権を侵害したことに大きな問題点がある。

厳密には、学校ではなく、生徒を対象にした「無償化」適用であるにもかかわらず、私が出会ったある韓国メディアの記者は、「北(朝鮮)への助成をやめるべきだ」という認識を示した。私は「情けない」と思わず発言した。そして会見後のブリーフィングで、同じ民族としての自覚を欠き、朝鮮学校の実情を知らないのではと指摘した。その記者の認識自体に問題があるのはもちろんだが、その認識は多くの人々が持つ間違った認識だ。

朝鮮人強制連行真相調査団の活動で、遺族を朝鮮から日本に招き入れる活動に携わったとき、さんざん放置され、最後に朝鮮側の随行員の一人を日本入国時に「逮捕せざるを得ない」とする政府見解すなわち「事実上の入国拒否」に遭った。政府の嫌がらせを目の当たりにし、われわれの運動の的が官邸にあると再認識した。

決して奪ってはならないものが、子どもの権利だということを今後も強調したい。このような考えは、日本の教員たちの間に広がっている。

「無償化」施行から2年半となった昨年11月23日、東京で開催された都民集会(東京の朝鮮学校を支援する都民集会)には、労組を含めた様々な階層、組織の人々が集まった。「無償化」適用を求める運動により共に闘うことを誓い合ってきた多くの仲間が一人、また一人と増え、それが組織的に集結した。集会では朝鮮学校への「無償化」適用、都の補助金復活を求め、その後、文科省、都側に要請書を提出した。都には、1952年に朝鮮学校に助成金を初交付し、それが各地に波及した経緯を忘れてはいけないことも伝え続けている。

同胞との共闘を誓いたたかった日本市民は多い。写真は、文科省で要請活動をする「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会の一行(2012年2月14日)

私は今後も在日朝鮮人の方々と共闘したいと考えている。そのための運動の基礎がこの約3年間の心ある人たちの結集で作られ、強固になりつつある。

最近、私は、在日朝鮮人の方と関わるきっかけについて考える。そして、幼いときの学友の姿をふと思い出す。疎開先の高崎で「かっちゃん」と読ばれていた朝鮮人の学友が、日本人のガキ大将格に大きくなったアカザの茎で鞭打たれ悲しそうな顔をしていた。東京から疎開し、いじめられる側に居ながらそれを止められなかった自分がいた。

「かっちゃん」だけではない。在日朝鮮人1世の人とも交流があった一人として、「11.23集会」の実行委とともに、一連の民族差別問題解決のため、尽力したい。運動による宝は自己変革と仲間の拡大だ。仲間を得ることで人間としての幅が広がり、それが真の財産になっていくということを後世に伝えたい。

(まとめ=李東浩)

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