「それ以外」の選択肢/徐麻弥
2023年04月04日 13:33 論説・コラム それぞれの四季私の第1子は1年間だけ日本の幼稚園に通ったことがある。入園して給食献立表が配られた際、私は困惑した。月に一度、「お母さんの手作り弁当の日」があると書かれていたのだ。長年にわたり運営されている私立幼稚園なのに。これまで誰も疑問を抱かなかったのかもしれない。連絡帳に「お父さんもお弁当を作っていいですか?」と書いた。翌月の献立表は「手作り弁当の日」に変わった。私は小さくガッツポーズをした。
それしか知らずに生きてきたから気づかない、という経験は他にもある。高校生になり朝鮮文化研究会の活動に参加するようになった。ある日、ある先輩が「明日から民族名で学校に行く!」と宣言した。目から鱗だった。周りの在日同胞はみな、日本名で生きていた。「それしかない」と思っていた。「それ以外」があるなんて! その日、「日本名で生きる」以外の選択肢が私の中に生まれた。大学入学を機に「民族名で生きる」ことを選択した。
「それしかないことないでしょう」という絵本に最近出会った。「それ以外」を知った時、私の世界はより明るく、広くなった。子どもにも、そんな世界を見せてあげたい。最近、「男女混合名簿」を導入する学校が増えている。わが子の学校もそうなるだろうか。
選択肢が増えれば、私たちの生き方はよりいっそう豊かになるかもしれない。
(山口県在住、朝鮮学校保護者)