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「妖怪の孫」

2023年03月27日 11:26 論説・コラム 春・夏・秋・冬

映画「妖怪の孫」を興味深く観覧した。安倍政権の正体を立体的に検証した示唆に富む名作だ。

▼A級戦犯であり「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介は、孫の安倍晋三元首相にとっては心酔する存在であり、彼の政治的性向や目標もその枠内にあった。この映画では、母方の祖父がどんな人物かを直截的に指摘し、その孫がどんな家庭環境でどのように育ったかなどについて生々しい証言を通じて明らかにされる。

▼本作品は、安倍政権が「美しい国」を作るという名目の下にあらゆるものを破壊する手法を暴露すると同時に、その結果として「日本国民の心の中に棲む妖怪」を浮き彫りにする。長期政権が続く中でこの国には「安倍的なもの」「安倍的要素」がまん延したが、それは政治家、官僚、メディア、そして国民が支配されたからである。

▼企画プロデューサーを務めた元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、支配されている人には、完全に洗脳されて「安倍的なもの」を積極的に支持する人たち、リベラルでも諦めている人たちの2通りがあり、この空気のまん延こそが「妖怪による支配」だと言う。不条理も貧困も「自己責任」とされる。そして、安倍政権がもたらした「分断と凋落」から日本を救う道はあるのかを問う。

▼現在の日本の政治の背景が分かるように編成され、有権者が知るべき情報、メッセージが溢れている。これは、大手メディアが取り上げない政治的「タブー」への挑戦でもある。(益)

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