〈心に残る言葉2012〉「子どもたちの未来のために」
2012年12月22日 10:01 コラム全国各地で民族教育の権利を守るためのたたかいが続いている。その中でも一際目を引いたのがオモニたちの活動だ。
この一年間、連日のように朝鮮学校への「高校無償化」適用を求める要請活動や集会、街頭宣伝が行われた。
保護者らが足を運ぶ度に、担当者は「継続審査中だ」の一点張りだった。「厳正な審査」はすでに2年以上続いている。
文科省に何度も足を運んだ厳広子さん(49、東京朝鮮学校オモニ会連絡会代表)は、「日本の植民地支配から解放されて60年以上も経つ。いまだに朝鮮学校を否定されるのは、わが子が朝鮮人であることを否定されているようで許せない。審査がまだ継続中だというのは詭弁でしかない」と指摘した。
「無償化」制度から朝鮮学校のみを排除するという政府の見解が明らかにされた直後から、各地の自治体で朝鮮学校への補助金カットが相次いだ。
大阪では、2010年、当時の橋下府知事が補助金支給のための「4要件」を一方的に提示。それを満たしていないという理由で朝鮮学校への補助金を問題視し、その後松井府知事、橋下市長は2011年度補助金を支払わなかった。
あるオモニは、大阪朝高を視察し、生徒たちとスクラムを組んだりして笑顔を見せていた橋下知事が、その後手のひらを返したように「4要件」を突きつけた当時の様子がいまでも頭から離れないと、怒りを露わにする。
「肖像画をおろせ」「反日教育を行っていないか調べさせろ」
これらの要求は、60余年間にわたり受け継がれてきた民族教育を踏みにじるものだった。
「4要件を受け入れても現状は何ら変わっていない。当然の権利である民族教育の自主性を守るのに譲歩してはならない」
定期的に行われる女性同盟東大阪南支部の会議でオモニたちは、同胞一人ひとりがしっかりプライドを持つことの大切さを語った。
昼間に働いているオモニたちは、夜集まることが多い。分会活動や「無償化」要請活動などの報告を行い、それぞれの成果を確認しながら子どもたちを守っていこうと激励し合う。暑い日ざしの中でも街頭に出て、同胞たちとともに毎回数百枚のビラを配り続けた。
大阪朝高オモニ会の千秀月会長(51)は、今よりもはるかに在日朝鮮人への弾圧がひどかった解放直後の日本を生き抜いた1世、2世たちのたたかいを振り返った。そして、これからも寄り添ってくれる同胞、日本市民らと手を取り合って、子どもたちの未来を守るたたかいを継続する覚悟を語った。
子どもを想う親の心情は万国共通だ。どんなに過酷な現状に置かれようとも、わが子を守るために困難に立ち向かう。
「子どもたちの未来のために」
1年間を通して何度も聞いたこの言葉から、朝鮮学校に通う子どもたちの生きる道をなんとしてでも守ってみせるという、オモニたち、同胞たちの固い決意と底知れぬ力を感じた。
(李炯辰)