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〈ここで育つ―夏期学校を訪ねて〉地域の「受け皿」、意義かみしめ/奈良

2022年08月22日 14:14 民族教育

コロナ禍が続くなかで迎えた今夏、各地で「ハギハッキョ」(夏期学校)が開校した。コロナ以後、人々をとりまく環境や活動様式が変化するなか、民族教育における準正規教育の現場はどのような状況にあるのか。各地の「ハギハッキョ」を訪ねた。

奈良で「ハギハッキョ」が開催されていた7月28日、運営拠点となる奈良幼稚班を訪ねた。奈良では、7月25日から今月10日までと、18日から30日までの期間、平日を基本に「ハギハッキョ」が運営されており、この日は、朝鮮学校と地域の日本学校に通う計5人の児童たちが参加していた。

講師らのサポートを受け、夏休みの宿題に励む受講生ら

「アンニョンハセヨ~!!」「今日は何するー?」

1日のはじまりを知らせる受講生らの元気な声が、校舎内に響き渡る。朝大生や教員など、それを迎える大人たちの頬が自然と緩んだのがわかった。

今年は、期間中、実数で10人ほどが参加予定だという。奈良市や天理市、大和高田市、生駒市など奈良県全域から通うため、地域の朝青員や教員たちは講師だけでなく車での送り迎えも担当する。

朝9時半に登校した受講生らは、学齢前児童対象の「幼稚班」と学齢期児童対象の「小学班」のクラス別に指定の教室へと向かった。この日「小学班」クラスに参加した3人の児童は、同校幼稚班の卒業生や週1で運営されてきた土曜児童教室の受講生で、普段は県内の日本学校に通っている。

夏期学校の開校から4日目だったこの日、慣れない環境や友人との付き合いに、多少の緊張もあるのかと思いきや、3人の後を追い教室を覗いて、拍子抜けしてしまった。見ると、慣れた様子で自分の席につき、宿題帳を出して講師たちが来るのを待っている。数分が経ち、待ちくたびれたのか、何やらお絵描きをはじめる3人。途中、ああでもないこうでもないと、げらげら笑いながら話していた。一方「幼稚班」クラスでは、児童らが日本語で話す言葉を、すぐに朝鮮語に変換して教える教員たちの様子が印象的だった。

プールの時間には、子どもたちの笑顔がはじける

受講生たちは、午前中、講師の朝大生や教員らのサポートのもと夏休みの宿題をしたり、運動場に設置した簡易プールで遊んだり。昼食後には、レクリエーションとしての科学実験や泡遊び、下校前の掃除とホームルーム活動など、そこには、居心地の良さからかハッキョでのびのびと遊ぶ、疲れを知らない子どもたちの姿があった。

2019年に創立50周年を迎えた奈良ハッキョ。少子化や運営難などにより、99年に中級部が、2008年に初級部が休校したが、地域コミュニティの拠り所を守りたいという地域同胞たちの熱意が原動力となり、2014年から「奈良朝鮮幼稚班」として再出発し今年で9年目を迎える。

朝青奈良県本部の姜敬大委員長によれば、民族教育の灯を消すまいと2012年に開設された児童教室「な~らのハッキョ」の運営蓄積があり、現在、夏期学校の参加者たちも増加傾向にあるという。そのうえ、同校では近年、「預かり保育、児童教室、夏期学校、訪問活動などに力を入れながら、正規教育へつなげる努力を重ねている」(姜委員長)。

幼稚班主任を務める尹莉佳さんは今年で教員生活3年目。幼児期から受ける民族教育の素晴らしさを「ユチバンで育つ児童たちの姿から感じてほしい」と充実した保育の提供のために余念がない。

「準正規教育という受け皿が、地域にある意義を強く感じている」と尹さん。そう語るのは、自身もまた「ウリに触れて、つながる最初の入口が児童教室だったから」だ。中学まで日本学校に通い、その後愛知中高高級部に編入し、今に至るかのじょは「受講生たちはまだわからないと思うし、当時の自分もこの場所の大事さをわからなかった。けど今教員になりはっきりと言える」と述べながら、こう続けた。「児童教室や夏期学校で学んだ子どもたちが、自分のように朝鮮学校へつながる。そんなきっかけが準正規教育にはある」。

受講生が残した感想文

この日、「小学班」クラスに参加した受講生たちに感想文を書いてもらった。そのうちの一人、水谷莉玖さんの感想文から「受け皿」の意義を改めて確認した気がした。

「かん字とハングルでお父さんと、お母さんと、莉犬という字を教えてもらいました。自分もこんなことができたらいいなと思いました」(莉玖さんの感想文より)

(韓賢珠)

 

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