ヘイト解消法6年、残る課題は/日本の市民団体がシンポジウム
2022年06月09日 09:43 権利ヘイトスピーチ解消法(以下、解消法)が施行され、今年で6年を迎えた。3日には差別に反対する市民団体「のりこえねっと」が主催するシンポジウム「ヘイト裁判と日本社会」が東京都内で行われた。司会を務めたジャーナリストの安田浩一さんは、解消法施行後も頻繁に行われるヘイトスピーチやヘイトクライムの現状に対し「『差別は絶対に許さない』と繰り返し声をあげることが大切」であると訴えた。
構造的差別
シンポジウムには、のりこえねっとの前田朗共同代表(東京造形大学名誉教授)、田中宏共同代表(一橋大学名誉教授)、外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士、京都第1初級学校襲撃事件弁護団の上瀧浩子弁護士が登壇。それぞれが関わった差別事案に言及しながら、ヘイトの現状と課題を述べた。
前田共同代表は、ここ10年間に日本で起きたヘイトスピーチ、ヘイトクライム事件について振り返り、こうした事件が生まれる根源に日本国憲法があると指摘した。「憲法はすべての条項で主語が『国民』で、外国人の権利は含まれていない。憲法自体が差別をはらんでいる」と指摘した。
また、前田共同代表は重要なポイントとして、差別の矛先が「女性」と「子ども」に多く向いていることを指摘した。これに対し安田浩一さんも「レイシストは社会的弱者をピンポイントで狙って攻撃している」と、その醜悪さを強調した。
ネット上のヘイトと裁判について言及した師岡弁護士は、解消法について「日本で初めての反人種差別法ではあるが、規制できる範囲に限界がある」と指摘。解消法施行後、ヘイトデモの回数が減少するなど一定の効果が見えた反面、救済機関がないために差別を受けた被害者が自ら声を上げなければいけない現状がある。