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〈飛躍への第一歩~金剛山歌劇団・2021年の新人団員たち・下〉

2022年01月03日 10:14 文化

昨年、7月の阪神地区公演を皮切りに、2年ぶりとなる巡回公演で各地の同胞や日本市民らを沸かせた金剛山歌劇団公演。「雪に覆われても春には青々と蘇る松の木のように力強く生きていこう」という団員たちの思いが込められた公演テーマ「솔SOLL」(=松の木を意味)は、長引くコロナ禍でも明日を生きる活力と希望を観客たちに届けた。一方で、感染拡大と同じタイミングで歌劇団に入団した2021年度の新人団員たち。年間の活動を通じて、さらなる飛躍を誓う団員たちの思いを2回にわたり紹介する。

祖国を身近に感じて/ソヘグム奏者・柳明里さん

ソヘグム重奏「ひばり」を演奏する柳さん(写真中央)

「演奏を聞いた同胞や日本の皆さんが、祖国を身近に感じてくれたら嬉しい」

金剛山歌劇団アンサンブル公演「SOLL」西東京公演を迎え、ソヘグム奏者の柳明里さん(21)はこう語った。

2021年最後の公演となったこの日。柳さんは「生まれ育ったここ西東京で、後輩たちやお世話になった先生の前で公演できることが嬉しい」と話しながら、舞台に立つ意気込みを語ってくれた。

柳さんがはじめてソヘグムに触れたのは、初級部4年。その頃から歌劇団団員になることを夢見てきたという。高級部の頃には通信受講生として、祖国でも楽器の技術を磨いた。

その後、本格的な音楽の道に進むため朝大教育学部・音楽科に進学。朝大生活を通し、考えの変化が訪れる。

「ただ歌劇団に入りたいという思いから『何のために民族楽器を演奏するのか』について深く考えるようになった」。団員となった今でも、団員としての自身の役割について常に模索しているという。

団員としてはじめて参加した巡回公演。日本各地を回りながら、柳さんはソヘグム5重奏「ひばり」など、伝統的な朝鮮音楽の音色で観客を魅了。「私たちの演奏が人々を励まし、力を与えられていることを実感できた。観客の方たちの表情や、残してくれた感想文などを通して、一緒に音楽を作り上げている感覚にもなった」。

1年間を振り返り「とにかく全力で走り続けた」と話す柳さん。「まだまだ足りないことだらけだが、練習を重ねてひとりでも多くの観客に民族芸術の素晴らしさを伝えたい」と来年を見据える。

「幼いころ、客席で感じたあの感動を、次は私が伝えたい。奏者としての活躍を通して、今まで育ててくれた親や先生、祖国に恩返しをしていきたい」。

支えを原動力に/舞踊手・崔勇貴さん

舞台に立つ崔さん(写真左から2番目)

毎年、歌劇団公演のフィナーレで観客の目を引く長いサンモ。今年、その重役を任されたのが崔勇貴さん(28)だった。

大阪朝高(当時)を卒業後、約10年間地域の商工会に勤めた崔さん。幼い頃から体を動かすのが得意で、朝鮮舞踊にも興味を持っていたが、歌劇団のオーディションには一歩踏み出せないでいた。

しかし5年前、文芸同大阪支部・舞踊部が主催した公演「根を想う(뿌리를 생각하네)」で朝鮮舞踊を披露したことが転機となる。「舞台に上がった喜悦、誇りがずっと自分の中に残り『このままでいいのか』と自問するようになった」。

「舞踊手としてスタートを切るには、かなり遅いというのも知っていた」と打ち明ける崔さん。一方で、舞台で朝鮮舞踊を披露し、同胞に感動を与える存在になりたいという思いは日に日に増していくばかりだった。

悩んだ結果、崔さんは意を決して退職。舞踊研究所にも通い技術の磨きに力を入れ、昨年から歌劇団の舞踊手として活動を始めた。

今年の舞台は、初ステージであった兵庫・阪神地区公演が印象に残っているという。「舞台に立てる嬉しさを感じる反面、プレッシャーも大きかった。出演時間は数分にみたないが、無事やりきれるか心配だった」。

そんな崔さんの心配を、観客から湧き出る拍手と声援が一掃してくれた。それらに力を得て、フィナーレを飾るサンモ回しも見事成功させることができた。

「コロナ禍でもたくさんの地方を回り、同胞、日本の方と触れ合うことができた。その過程で、かれら一人ひとりの支えがあるからこそ歌劇団は存在するのだと学べた」と崔さん。「苦しい時でも支え、見守ってくれるかれらの暖かさを原動力に、舞踊手としての地歩を固めていきたい」と意欲を語った。

(金紗栄)

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