60周年記念し連続学習会/埼玉初中オモニ会が主催
2021年06月17日 10:49 主要ニュース 民族教育「さいたまオモニ大学」が開講/“志を持ち技の追及を”
埼玉初中オモニ会が主催する学校創立60周年記念イベント「さいたまオモニ大学」が12日、同校で開講した。連続学習会の第2回目となったこの日は、中3生徒とその保護者を対象に特別講義が行われた。講師に、朝鮮大学校の康明逸准教授が登壇。「受験・卒業・進学×在日朝鮮人だからこその教育」をテーマに、その当事者である生徒と保護者が共に参加し考える新しい形式の学習会となった。
語られない強み
講義に先立ち、オモニ会が制作した「さいオモチャンネル」が上映された。これは、同校の創立60周年を盛り上げ、オモニ会活動の活性化を図ろうと役員たちが中心となり準備されたもの。この日の動画では、2017年、同校への支援を目的に保護者有志たちによって始まった「埼愛キムチ」の頒布会のようすがコミカルに紹介され、会場の笑いを誘った。
つづいて、康明逸准教授による特別講義があった。
康准教授は、冒頭で、漫画家の鄭大河さんやプロサッカー選手の朴一圭さんといった、近年朝鮮学校を卒業し活躍する人々を紹介。そのうえで朝鮮学校の現況と教育システムについて説明しながら、それが現在の日本社会やその経済状況、企業が求める能力などと比較したとき、いかにプラスに作用するのかをさまざまな資料をもとに解説した。
とりわけ、朝鮮学校の保護者たちが抱える葛藤として「民族的誇り・資質・自覚(アイデンティティ)」だけでなく、経済的安定や成功につながる「『日本(国際社会)で生き抜く力(社会人能力)』を民族教育の場で育てられるのかという点について、前者に比べ「あまり語られないが、しっかりウリハッキョの(教育の)なかで育てられる」と強調。活躍する卒業生たちの「成功」の背景に、「個人の努力と学び舎の良さ」があると述べながら、その根拠の一つに、「学生どうしが勉強を教え合う学習文化」が民族教育の場で確立されていることをあげた。
「米国National Training Laboratoriesの学習ピラミッド:学習定着率調査によれば、『他人への教授』つまり他人に教えることがもっとも知識を定着させるといわれている。ウリハッキョではこれを「서로 돕고 이끌기(互助、協調)」という学習文化によって既に実践している」(康准教授)
また同氏は、在日朝鮮人児童・生徒らが、①教え合い、助け合う学習環境、②多彩・多様な経験と体験、③教員、地域の人々、保護者、卒業生の密着・関心、④学校内での集団活動、⑤積極性、コミュニケーション力などの能力育成―で構成された朝鮮学校の教育システムのもとで学んだ結果として卒業後、在学中に育んだ能力を開花させていることも強調した。
最後に、康准教授は「知識はたくさんあっても、それを社会にどう還元したらいいのか方法がわからない人々がたくさんいる」と言及しながら、参加者たちに対し、民族教育の場に備わる「多様性の力」を糧に「志を持って技を追求してほしい」と語りかけた。
オモニの60年をテーマに
参加した中3保護者の権奈美さん(47)は「就職し活躍する卒業生の話などを聞けてすごく勉強になった」と感想を述べた。自身が朝高に編入するまで、日本学校に通いながら、わが子には「小さい頃から自分の名前でチョソンサラムとして育てる民族教育を受けさせたいという思いがあった」という権さん。今回の講義を通じ「成績がいい子も悪い子も、教える側だけでなく教え合いの文化の中で皆が育っているという日本社会にない特性や、勉強だけでは学べないことがウリハッキョにある、その強みを感じた」と語った。