【寄稿】聞き書き「清水澄子 愛と闘いの生涯」を出版して/朴日粉
2021年03月21日 08:00 主要ニュース 文化・歴史「民衆の側から政治を動かす」
生涯を女性解放の実現と在日同胞の権利擁護、朝鮮の統一支持などに尽くした元参議院議員の清水澄子さんが亡くなって、8年。コロナ禍のなかで同胞たちの暮らしも厳しい様相を呈している。そんなとき、清水さんが健在であればいろんな現場に顔を出して、励まして下さったのでは、と懐かしい気持ちになるのは筆者だけではあるまい。
抗がん剤治療のなかで
清水さんはこの3月1日、生誕93周年を迎えたが、縁のある方々に本書の出版を喜んで頂ければ幸いである。朝鮮新報の記者であった筆者が清水さんの聞き書きをしたのは、09年4月から10月まで。月に1~2回、さいたま市内のご自宅に通い、テーマに沿って話を伺い、原稿にまとめ、本紙に約半年間にわたって連載した。清水さんは同年2月初めに肺がんと診断されて以来、さいたま市内の病院に入院・通院をしながら抗ガン剤治療を受けていた。たまに、声がかすれたりすることはあったが、清水さんはどんな質問に対してもよどみなく答えてくださった。幼い頃の細やかな記憶や青春期の戦争体験、政治家時代の秘話、金日成主席との出会い…。午前中、2時間ほど話を聞いた後、私が近所で弁当を買ってきて、二人で昼食を取った。そんなときのとりとめのない話のなかには面白いものが多く、メモ用紙をいつも横に置くようにしていた。その後、また休みながら3時間程、話を聞いた。今、振り返っても濃密で、貴重で、至福のひとときであった。
なぜ、彼女は日本のなかでは異端ともいえる道を歩み、訪朝を重ね、在日同胞らに寄り添い続けたのだろうか。その思想、行動の原点を解き明かしたいと思った。