〈ものがたりの中の女性たち 39〉「宝玉のように大事に育てたのに…」/雍固執母
2020年11月01日 06:00 主要ニュース 歴史あらすじ
雍井(オンジョン)、雍淵(オンヨン)、雍鎮(オンジン)、雍堂(オンダン)村という奇妙な名の土地に雍固執という男が住んでいたが、豊作を嫌うひねくれ者で何事につけても不平不満を言い募り、八十歳を越える病弱な老母にかかるわずかな金も惜しむ吝嗇ぶりだった。
月出峰翠庵(ウォルテュルチゥィアム)寺にいた高名な道士が雍固執を叱りつけて来いと學大師を送るが、大師は雍固執の家令に鞭打たれて帰ってくる。
道士は雍固執を懲らしめるために式神を使い偽の雍固執を作り、それを雍固執の家に送り真偽をかけて争うようにする。
雍固執の妻子は、二人の「雍固執」のうち誰が本人なのか区別がつかず、仕方なく裁判に持ち込むことにする。
村長が家系図を持って来いと言うと、偽物の方が雍家のことに付いてより詳しく知っている。本物の雍固執は敗訴し罰を受け、村を追い出され乞食に身をやつす。偽物はというと彼の家に入り込み、その妻子と仲睦まじく暮らし始め、妻は何人も子どもを産む。
本物の雍固執は過去を後悔しながら流浪の身に。絶望の末、自殺しようと深山に分け入る。
崖から身を投げようとしたとき、道士が現れる。月出峰の道士である。雍固執が深く後悔していることを知った道士は、お札を彼に渡し家に帰るよう促す。
家に帰りそのお札を投げると、この間家に居座っていた偽の雍固執は瞬く間に藁に変わる。妻と偽の雍固執の間に生まれた多くの子どもたちもみな藁であった。
ようやく道士の道術にかかっていたことを悟った本物の雍固執は、それ以降考えと態度を改め善行に励む。熱心な仏教徒になり、母と妻と子らを慈しみ幸せに暮らす。