〈広島無償化裁判〉“国の屁理屈を肯定”/日朝友好千葉県の会と千葉ハッキョの会が抗議声明
2020年10月23日 06:00 主要ニュース 民族教育国が朝鮮学校を無償化の対象にしなかったのは違法だとして、広島朝鮮初中高級学校を運営する学校法人広島朝鮮学園および同校卒業生ら109人が原告となり、国に対し不指定処分処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟で、広島高裁は16日、一審の地裁判決を支持し、国の判断を「適法」とする不当判決を下した。これと関連し17日、日朝友好千葉県の会と千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク(千葉ハッキョの会)が連名で抗議声明を発表した。以下、声明全文。
2020年10月16日、広島高裁(三木昌之裁判長)は、高校無償化の対象から除外した国の処分の取り消しや損害賠償を求めて闘い続けている学校法人広島朝鮮学園と当時の生徒109名の控訴を棄却し、一審を支持する不当判決を下した。われわれ両会は、この判決に「腹の底から湧き上がる怒り」をもって抗議する。憲法に基づいて「良心に従い独立して職権を行う」裁判官とは到底認められない。
三木昌之裁判長は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と朝鮮高級学校が密接な関係にあると指摘した公安調査庁の資料等を基に「学校運営が法令に従った適正なものであることに合理的な疑いが生じる」として、無償化から除外した当時の文部科学大臣の判断に裁量の逸脱や乱用はなかったと結論付けた。裁判長は、朝鮮高級学校を無償化の対象にしたら就学支援金が朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に流れるなどと本気で思っているのか。
2010年に始まった「高校無償化法」は、国際人権規約の規定の実施であり、「全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」ことを目的として、政治的外交的理由に左右されることなく、全ての在日外国人高校生にも国として学びの機会を経済的に支援することを基本理念としている。現に、朝鮮高級学校を除くその他の各種学校の在日外国人高校生には適用されている。
2013年2月20日、第二次安倍政権の下村文部科学大臣は「国民の理解が得られない」という主観に基づき、朝鮮高級学校のみを無償化適用除外とするため文科省令を改悪した。朝鮮総連と「北朝鮮」との関係をことさら強調し、政治的外交的理由により朝鮮高級学校を「無償化」から排除した。今回の判決も朝鮮総連の朝鮮学校への「不当な支配」を適用除外の理由としているが、これは国や一部報道機関によって意図的に作られたものだ。朝鮮学校に対して「不当な支配」をしているのは日本政府のほうであり、朝鮮総連は、朝鮮学校を必死に支えてきたのだ。われわれ両会は日頃の活動を通してその事実を目の当たりにしている。支える朝鮮総連と支えられる朝鮮学校が密接な関係にあるのは当然のことだ。
納税の義務は等しく負わせておきながら、補助金の凍結・減額を行い、高校無償化から朝鮮高級学校を外し、幼保の無償化から朝鮮幼稚園を外し、さらにはCOVID-19に係る支援からも朝鮮学校を排除するなど、日本政府は朝鮮学校に対して一貫した差別政策を採り続けている。「多文化共生」を口にしながら、朝鮮に繋がるものはすべて排除する日本政府の人権感覚は異常である。本来、それを正すのが司法の役割であるにもかかわらず、国の屁理屈を肯定する下請け機関に成り下がっている。
この間COVID-19の影響により、千葉県唯一の民族学校である千葉朝鮮初中級学校(千葉ハッキョ)は、支援のためのイベントが相次いで中止となった。その結果、千葉ハッキョ存続のために欠くことのできない収益が無くなり、教職員の給料や教育活動に係る経費を賄うことが困難な状況に追い込まれた。しかし、千葉ハッキョの運営を困難にしているそもそもの原因は、保護者も教職員も日本人同様、等しく税金を納めているにも関わらず、自治体の補助金等が一切絶たれているという差別にある。
われわれ両会は、この困難を乗り切るため5月末から「新型コロナウィルスから千葉ハッキョを守るための支援カンパ」に取り組んできた。そして、数多の心ある市民から寄せられたカンパは現在、400万円に達している。われわれ両会は今後も引き続き、朝鮮学校への補助金支給・高校及び幼保の無償化適用を求め、全国の仲間とともに連帯して取り組んでいくことを表明する。
以上
2020年10月17日
日朝友好千葉県の会 共同代表 上野建一・小宮清子
千葉ハッキョの会 代表 廣瀬理夫