〈ものがたりの中の女性たち 37〉「妻の言うことを聞かずに破滅ね」/カトゥリ
2020年09月04日 16:27 主要ニュース 歴史あらすじ
雉の夫婦がいる。山鳥の習性で人里離れた林や水辺で曲がりくねった松の木を楼閣代わりに、畑や野原にやって来ては散らばった穀物をついばみ生きている。
素朴な麻の衣をまとったカトゥリは、五色の派手な衣に身を包んだチャンキと共に、九人の息子と十二人の娘を連れ食料を求め厳冬の荒野をさ迷い続け赤い豆を見つける。飢えた夫チャンキは我先に食べようとするが、雪の上の人間の足跡を見たカトゥリは夫に赤い豆を食べてはいけないと必死に言う。
それでも食べようとするので、カトゥリは昨晩見た不吉な夢のことを話しながら説得する。私を寡婦にするつもりですか? と妻が悲しげに言うと、あろうことかチャンキは妻を思いきり殴り足蹴にする。それでもカトゥリが涙ながらに不吉な夢のことを言うと、チャンキは彼女の懸命な忠告を聞かず浅薄な自分の知識をひけらかしては馬鹿にし、かえって妻を責め立て罵ったあげく豆を食べ、罠にかかって死んでしまう。絶命する直前、チャンキは妻に再婚は絶対にするなと言い残す。こと切れた夫を前に、「俺は男だと、女の言うことを聞くのも恥、妻の言うことを聞かずに破滅」と、カトゥリはつぶやく。
仕方なくカトゥリはチャンキの羽を拾い葬式をあげる。弔問に訪れたカラスやアヒルなどが再婚を申し出るが、カトゥリは全て断る。そうこうするうち、弔問に訪れたやもめのチャンキと気が合い再婚する。再婚した雉夫婦は子供たちをみな結婚させた後、全国の風光明媚な場所を楽しく旅し、最後にはふたりで海に入り貝になる。