〈取材ノート〉人間らしく
2020年07月30日 11:19 コラム現在、日本の某プロ野球チームのホームスタジアムでは、新型コロナの影響で入場できない観客に代わり、ロボットが選手らを応援している。一生懸命に手を振り歌うその姿は、ときに人間らしさすら感じさせる。
片やこちらは人間を見ているのに、ロボットと接しているようだった。7月初旬、幼保無償化を求める要請活動の現場でのことだ。
「子どもたちを平等に扱ってほしい」-感情をあらわにし、涙を流しながら無償化適用を求める保護者や幼稚園関係者。一方、向かい側に座る「かれら」は「省内で共有したい」「個人として答える立場にない」と、淡々と同じような言葉を繰り返した。両者の姿はあまりに対照的だった。
「かれら」は内閣府、文科省、厚労省の職員たち、まぎれもない人間だ。関係者の切実さや熱意は感じられたはずだ。なのに、「伝わっている」という実感がしなかった。関係者のだれもがそう感じていたはずだ。
将来、今ある職業のおよそ半分がロボットやAI(人工知能)に代替されるというある大学の研究結果がある。「ロボットのような人間」に代わり、「人間のようなロボット」が対応しているかもしれない。理不尽な差別が是正されない限り、今後も要請は続くだろう。各府省の職員らには必死の訴えに人間らしく少しでも報いてもらいたい。(根)