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朝鮮の感染者ゼロ主張が意味するもの/南朝鮮系米国人研究者たちによる論文

2020年06月29日 14:28 主要ニュース 共和国

現在も感染防止のための徹底した対策が講じられている(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

コロナ規制は一部緩和されたとは言え、第2波来襲の脅威は去っていない。朝鮮民主主義人民共和国は感染者ゼロとWHOに報告している。本当なのか?

去る5月20日、駐朝ロシア大使アレクサンドル・マチェゴラ氏は、インテルファクス通信との自らのインタビューを大使館フェイスブックに掲載。その中で大使は、欧米日メディアの懐疑論を念頭に、朝鮮の指導部が新型コロナウイルスの国内流入を阻止するため最も断固たる強硬措置をとったとし、朝鮮内に感染者がいないという報告を信じていると述べた。

さらに、米国の「朝鮮ウォッチ専門サイト『38ノース』」(4月23日付)が3人の南朝鮮系米国人研究者による論文『北朝鮮のCOVID-19ゼロ主張は何を意味しているか』という興味深い論文を掲載した。論文は次のように述べた。

「国境封鎖がCOVID-19(新型コロナウイルス)の初期の急増を防ぐだけでなく、パンデミック時のピークを低く抑えるうえで最も効果的な戦略であることが、ますます明らかになっている。多くの国が北朝鮮のように早期に旅行禁止措置と積極的な検疫措置をとればよかったと思っているに違いない」

以下は同論文の内容である(中見出しも本紙編集局による)。

素早く先手を打って国境封鎖

COVID-19(新型コロナウイルス)感染者がゼロであるという北朝鮮(原文ママ)の主張に対して「…これは全ての情報にもとづいて考えれば、あり得ないことだ」と駐韓米軍司令官ロバート・エイブラムズ将軍は語った。しかし最近の進展を踏まえると、われわれのそのような仮定を再検討するのも無駄ではないかもしれない。

中国が1月23日に武漢を閉鎖する3日前に、北朝鮮は中国発着のすべてのフライトをキャンセルし、その後数日以内に観光を一時停止し、中国との国境を閉鎖、直近に入国したすべての外国人と外国帰りの自国民に検疫を実施した。公衆衛生当局は、北朝鮮内でCOVID-19感染者が発見される前に先手を打った。

次に国境を閉鎖したのはイタリアだったが、北朝鮮の6週間後のことだった。すでにイタリアでは何千人もの死者が出ていた。感染が広がりだしてから、封鎖を数日遅らせれば患者が大幅に増加する可能性がある。

国境封鎖がCOVID-19の初期の急増を防ぐだけでなく、パンデミック時のピークを低く抑えるうえで最も効果的な戦略であることがますます明らかになっている。多くの国が北朝鮮のように早期に旅行禁止措置と積極的な検疫措置をとればよかったと思っているに違いない。

政府一丸、市民には情報で教育

北朝鮮はまた、医療従事者を動員すると同時に広範囲にわたる情報キャンペーンや教育キャンペーンをふくむ包括的、全国的な反COVID-19公衆衛生介入を展開した。医療分野で活動する人道主義組織が指摘しているように、北朝鮮の人々は非常に効率的に公衆衛生介入を実施している。北朝鮮の人々は、新型コロナウイルスの危険性と、ウイルスの侵入と拡散を防ぐための各個人の責任を認識していると思われる。

また、世界保健機構(WHO)から称賛されている中国が、この流行を封じ込めるのにいかに積極的だったかを覚えておく必要がある。ジョンズホプキンス・コロナウイルスリソース・センターによると、北朝鮮と国境を接する遼寧省、吉林省の2省は感染者がそれぞれ145例と100例で、それぞれ2例と1例の死者があった。中国政府は両省を半封鎖してCOVID-19を封じ込めた。新型コロナウイルスが、朝中を分ける880マイルの穴だらけの国境を通って侵入するリスクは、われわれが信じていたほど高くはなかった。

北朝鮮が検査機能を十分に持っていないので、COVID-19感染者が出てもわからないのではないかという見方もある。しかし、ロシアは3月中旬に診断機器を送った。中国は、早ければ1月に診断機器を送った可能性がある。検査能力は広範囲ではないが、北朝鮮は疑わしい人を検査できる。

COVID-19は、北朝鮮が直面した最初のパンデミックではない。2003年にSARS、2014年にエボラ出血熱の侵入を阻止することに成功した。パンデミックの間、北朝鮮の公衆衛生当局は過去の経験にもとづいて体系化した知識を利用して、ウイルスを防ぐための効果的な、政府全体が一丸となった戦略を立て、それを作動させているようである。

感染の封じ込めに自信を持つ

エイブラムズ将軍などは、COVID-19感染者は北朝鮮内にきっといるはずだと主張している。

中国で最初のCOVID-19患者が発生したと思われる昨年11月から、今年1月に国境が閉鎖されるまでの間に、ウイルスが国境を越えて北朝鮮内に侵入した可能性はありうる。「デイリーNK」のような一部のメディアは、北朝鮮が新型コロナウイルスの患者を抱え、200人の兵士を含む死者が発生したと主張した。だが、これらの報道は匿名の情報源にもとづくものであって、真偽の検証が不可能である。

COVID-19感染者がいるかどうかは別にして、北朝鮮が封じ込め措置にある程度の自信をもっているのは事実のようだ。すべての観光を停止し、中国との貿易をほとんどすべて停止した北朝鮮が、最近一部の規制を解除した。外国人が平壌市内を動き回り、人と会うことができるようになった。コンテナ船の南浦入港が再開され、全国から代議員が集まる最高人民会議が開かれた。

警戒ゆるめず治療能力構築に投資

北朝鮮は、COVID-19を阻止したかのように振る舞っている。しかし、中国で数千件から始まって200万件以上にも達した新型コロナウイルスは、最終的には北朝鮮にも侵入するであろう。

彼らはそれを知っており、必要に応じて予防戦略を調整している。先ごろ開かれた党中央委員会政治局拡大会議は「世界的な流行病の着実な拡大を踏まえ、ウイルスの侵入を徹底的に阻止するための厳格な国内対策」を講じることを決定した。

さらに彼らは、北朝鮮内での感染者発生に備えて治療能力構築に投資している。新しい平壌総合病院と酸素製造施設は、われわれが知っている2つの例にすぎない。診断と治療に必要な外部の支援も到着し始めている。

非常に強力な早期の封じ込め政策を効果的に実施することにより、北朝鮮は「弾丸をかわした」ようだ。

COVID-19感染者が北朝鮮内にいないということは、議論の余地があるかもしれないが、議論の余地がないのは、政府がいくつかの規制を緩和できるほど十分な自信を持っているということである。

北朝鮮が今後、COVID-19の発生をどのように管理するかはまだわからないが、これまでの彼らの封じ込め戦略が示唆するところを、よく見るべきだ。性急な判断を下すべきではない。

共同執筆者

キー・B・パーク博士(ハーバード大学医学部教員、WHOコンサルタント、これまで18回訪朝)、ジェサップ・ジョン(ハーバード大学医学部の韓国政策研究助手)、ヨンウ・ジョン(ジョンズホプキンス大学で国際問題研究)

(朝鮮新報)

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