〈それぞれの四季〉新型コロナウィルスと尊厳/李月順
2020年04月22日 12:06 コラム新型コロナウィルスの感染拡大にともない、私たちの不安も日々増大している。感染する、させるかもしれないという不安に始まり、検査、医療、仕事、生活費、こども、年老いた親など数え切れない不安がある。こうした不安に加えて、在日コリアンは、官製ヘイトともいうべき行政による差別にも直面させられる。
例えば、さいたま市の「マスク配布問題」である。ウィルスは人間をえらばないが、不安に乗じた偏見や差別は、在日コリアンなど在日外国人に容赦なく向けられる。日本社会で不可視化されてきた在日コリアンが可視化されるのは、こうした差別や偏見の対象になるときだ。
コロナウィルスに対する不安の根底には、命の問題がある。そして、命は尊厳の問題と関わっている。さいたま市の「マスク配布問題」を通して明らかになったのは、差別や偏見に基づく政策が行政によっておこなわれたこと、すなわち、子どもの命の選別が行政によっておこなわれたことだ。
私は、こみ上げる怒りを、感情論にとどまらない、次世代の「命」すなわち「尊厳」を守るためのエネルギーに変えていきたい。このウィルスによって分断されない連帯のネットワークをしっかり守っていくためにも。
(大阪市在住、アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク代表)