朝大・政経学部法律学科創設20周年/卒業生らが主催し記念式典
2019年11月11日 16:13 主要ニュース同胞社会への熱意、再確認

朝大・政治経済学部法律学科創設20周年記念式典
朝大・政治経済学部法律学科創設20周年記念式典および祝賀宴が3日、東京・上野で行われた。
朝鮮大学校の韓東成学長、洪南基理事長、政治経済学部崔勇海学部長、政治経済学部連合同窓会および在日本朝鮮人人権協会・金奉吉会長をはじめとする教員および関係者たち、日本の講師たち、金敏寛実行委長をはじめとする法律学科卒業生ら90人を含む約140人が一堂に会した。

卒業生らが一堂に会した
1999年4月の創設から現在まで、同学科の卒業生は200人を超える。卒業生たちは、弁護士をはじめ各種の法律資格を取得し、在日同胞の権利擁護のために奮闘しているだけでなく、法律に関するすぐれた専門知識を身につけた専従活動家として、在日朝鮮人運動の中核を担っている。
実行委らは約2年前から記念事業を進めた。今回の行事はもちろん、卒業生の弁護士らによる学科創設20周年記念図書の執筆や募金事業に取り組んできた。
記念式典でははじめに、現在、九州で弁護士を務める金敏寛実行委員長(1期生)があいさつした。
金実行委員長は、学科創立に携わった先代たちや恩師らへ感謝の言葉を述べた後、「先生方の意志を継いで、それぞれの持ち場でより活発に活動していきたい。先生たちから受けた恩を後輩たちに引き継いでいくべく、法律学科が今後も、時代のニーズに合わせて大きな前進を成し遂げられるよう尽力したい」と述べた。

式典のようす
続いて崔勇海学部長が基調報告をした。
崔学部長は「法律学科の創設は、朝大と政治経済学部の発展、さらに在日同胞らの民族的権利を擁護・固守するための闘いにおいての画期的なターニングポイントとなった。法律学科は20年間、朝大と在日朝鮮人運動に輝かしい歴史を刻んだ。その教育内容および人材らはすぐれた水準をもって、在日同胞社会はもとより日本社会の中でも高く評価され、認められている」としながら、「政治経済学部では今後一層、教育の質の向上に努め、在日朝鮮人運動の新たな発展を担う活動家、専門家たちを育てていく。法律学科の卒業生らが今後も、在日朝鮮人運動および同胞社会の大黒柱として、自身の使命をしっかりと果たしていくことを信じている」と話した。
韓東成学長、金奉吉会長の祝辞につづき、法律学科の創設、発展に寄与した在日朝鮮人歴史研究所の呉圭祥副所長(創設当時学部長)、朝大の朴三石副学長(創設当時講座長)ならびに日本の講師らに感謝状が送られた。

感謝状を受け取った功労者たち
創設当時から10年間、講師を務めた法学者で早稲田大学名誉教授の櫻井孝一氏が、代表して発言した。櫻井氏は当時を振り返りながら、「学生たちは皆が優秀で、とても楽しかったことをよく覚えている。卒業した教え子たちは法律の専門家として、在日の皆さんのために一生懸命、働いている。この20年、早いけれど、ものすごい歴史が築かれたと思う。皆さんのいよいよの活躍を期待したい」と述べた。
在学生にも記念品が贈呈された。
法律学科の卒業生と政経学部卒業生らの寄付によって、資格試験をはじめとした専門知識習得のための学習資料、資格試験のための学習室、先述の記念図書が贈られた。
式典につづき、祝賀宴が行われた。
多くの支援の賜物
法律学科は、民族教育における法律専門家育成に対する同胞らのニーズを汲み取り創設された。創設当時、政経学部学部長を務めた在日朝鮮人歴史研究所の呉圭祥副所長によると、政経学部の教員をはじめとする関係者らは、学科の創立のため総力をあげ、試行錯誤を繰り返したという。
とくにカリキュラムの編成において、日本の国公立および私立大学法学部のカリキュラムを取り寄せ研究を重ねるだけでなく、在日朝鮮人運動の中核を担う政経学部の学部使命に則って独自のカリキュラムを作りあげた。同時に、朝大教員、弁護士をはじめとする同胞有資格者たち、そして、民族教育に対して理解がありながら法学界でも高い実績のある日本の法律専門家たちで、ハイレベルな講師陣を編成した。
以降、高度な専門知識を身につけた210余人の学生らが卒業し、現在さまざまな分野で活躍している。
「多くの支援のおかげで、素晴らしい先生、素晴らしい環境が整った。その中で何よりも重要なのは、素晴らしい人材が育ったということ。法律学科の学生、卒業生の功績について、感謝と激励の拍手を送りたい」(呉副所長)。

日本の講師たちへ花束が贈られた
祝賀宴では、学部の創設および発展に寄与した各界層の来賓たちがあいさつする中、日本人講師たちも紹介され、教え子から花束が贈られた。創設初期に講師を務めた中山善房・元裁判官による歌の披露に続き、現在も講師を務める東京造形大学の前田朗教授が発言した。
前田教授は「私は朝大での授業の合間、よく学生たちに『比較キムチ学』という話をする。私は朝鮮半島はもちろん、世界各地の朝鮮大使館などでキムチを食べている。他の人がなかなか食べられない朝大のキムチも食べている。どのキムチが一番うまいかという話をするのが『比較キムチ学』なのだが、あるとき学生が『先生はぜんぜん分かっていない。一番うまいのはオモニのキムチに決まっている』と言ったのだ。返す言葉が見当たらなくなってしまった。朝鮮大学校で学ぶ皆さんの気持ちを、新たに知った瞬間だった」と思い出を語った。
NPO法人ウリハッキョの梁衡宇理事長も壇上に立った。
同法人の設立は、法律学科の歴史と深い関わりがある。「今から12年前、朝大の関係者から、法律学科卒業後に大学院に残った学生たちが、お金と時間がなく、『寝る間も食べる間も惜しんで勉強している』と聞いた。何とかできないかと青商会の有志が集い、2007年の『ウリ民族フォーラムin岡山』で同胞弁護士育成事業をかかげ、私たちの法人が立ち上がった」(梁理事長)。同法人は設立以来12年間、司法試験を目指す同胞学生たちに奨学金を寄付するなど、専門家育成に尽力してきた。梁理事長は「今後も同胞専門家を育成する事業に積極的に寄与していきたい」と力強く語った。
不条理に立ち向かう覚悟
「卒業したとき、きっと皆が、法律知識を持って、朝大政経学部・法律学科卒業生だからこそできる形で同胞社会を担っていこうと熱い思いを抱いたはず。しかし、いざ現場に出ると、日々の忙しさや現実の難しさから、忘れたくなくても初心は段々と薄れてしまう。この行事を通して、卒業時の熱い思いを皆でもう一度、再認識できたら。そしてこの場を、私たちをこの道に導いてくださった先生方への感謝の気持ちを伝える場にしたい」(金敏寛実行委員長)

20周年記念事業の実行委員たち
20周年記念事業の実行委員は、各期の卒業生からなる。すべての事業を卒業生自らが企画し実現させた。
沖縄から駆けつけた弁護士の白充実行委員(5期)は、準備にあたった2年間、「後輩たちが本当に頑張ってくれた。学生時代にともに学んでいなくても、卒業後にこうして同じ法律学科で学んだ同志として力を合わせられてうれしく思う」と話した。
白実行委員は加えて「法律を学んだり資格を取る理由は、決して良い職を手にし、お金を儲け、高い地位に上り詰めるためではない」としながらつづけた。「朝大、法律学科は、現在の不条理な社会構造についてしっかりと教えてくれた。また人権は目的ではなく手段であると、人間が人間として尊重されるために人権があるということも。恵まれている人とそうでない人がいて当たり前となっている現在の日本社会の構造こそ、在日朝鮮人差別をはじめさまざまな排除が繰り返される原因だ。朝大での学び、ともに学んだ仲間たちは、その不条理に立ち向かう覚悟を決めさせてくれた。そしてその方法としての人権について気付かせてくれた。きっと多くの卒業生と共有できる話ではないだろうか」。
(李鳳仁)