「歴史修正主義者」らの主張に反論/映画「主戦場」監督が記者会見
2019年06月04日 16:55 主要ニュース日本軍性奴隷制問題を扱った映画「主戦場」の監督であるミキ・デザキさんが6月3日、弁護士会館(東京都)で記者会見を行った。5月30日に一部の映画出演者たちが記者会見を行い、映画の差し止めを求める共同声明を発表したことを受けてのもの。監督はそれらの主張に反論するとともに日本軍性奴隷制問題について自身の見解を語った。
映画「主戦場」は日本軍性奴隷制問題について、意見を対立させる人たちへのインタビューをまとめた作品。
5月30日に行われた記者会見で、「主戦場」の一部出演者たちは、「商業映画への『出演』は承諾していない」「本質はグロテスクなプロパガンダ映画」「保守系論者の人格攻撃」などと抗議し、会見を行った藤岡信勝氏やケント・ギルバート氏ら7人の連名で映画の差し止めを求める共同声明を発表している。
監督はまず、共同声明を発表した7人全員から承諾は得ていると断言。取材前に出演者たちから「受諾書」または「合意書」にサインを受けていることや、出演者とのメールを示しながら「商業公開される可能性があることを知らなかったということは事実ではない」と訴えた。また、一部の出演者らにはプサン国際映画祭の前にそれぞれの出演部分の映像を送付していることも強調。それらに異議が申し立てられなかったことから「不満はない」と判断し上映したとし、「合意の義務を果たしたと思っている」と述べた。
「公正で中立な映画を作ると言っていた」と批判があったことについても「映画を作る過程で、それぞれの主張に先入観を持たずに映画を作るという意味」だと反論。「どんな映画、本、記事も客観的ではない」とした上で「出演者の中で一番説得力のある論点と反論をいれたという点で、この映画が公正だと信じている」と主張した。また、映画では監督が問題の結論に至った過程が示されているために「プロパガンダ映画ではない」とし、出演者らは「自分たちの正義、正しさをあまりにも妄信しているあまり、両側の話を聞いて私が自分なりの結論を導くことができると信じられないのかもしれない。事実は、両側の話を聞き、どちらに説得力があるか自分なりに結論を導いた」と訴えた。
一部の出演者が抗議したことについては「この映画を気に入っていないから」「評判を下げたいと思っている」ことからの行動だと批判。「映画の中で、彼らの言葉を捻じ曲げたり、途中で切断したりはしていない」とし、「自分たちの発言を恥ずかしいと思っているのだろうか」などと疑問を呈した。
監督の見解
監督は記者会見の中で、日本軍性奴隷制などの問題について、自身の見解についても触れていた。
監督は出演者たちを映画の中で「歴史修正主義者」であるとした点について、「彼らは単なる右派、保守、ネオナショナリストではない。現在世界的にコンセンサスの取れている『慰安婦』の歴史を塗り替えようとしている」とし、「彼らの行動が世界的に合意されている歴史観を変えようとしているところを見るならば、彼らは歴史修正主義者」だと訴えた。
また、日本軍性奴隷制問題において「彼女たちは性奴隷であったこと、強制連行されたということ」において世界的なコンセンサスが取れていると述べた。
監督及び「主戦場」の配給会社は現在のところ、一部の出演者らの抗議を受けての映画の取り下げ、または内容の変更は考えていないとしている。
(金孝俊)