五感で楽しむ映画体験/科学技術殿堂、人気博す4D映画館
2018年02月09日 09:17 主要ニュース 共和国【平壌発=李相英】平壌市内に2016年1月にオープンした科学技術殿堂は、電子図書館や各種の展示を通じて科学技術の普及を図ることを目的としている。館内には趣向を凝らしたさまざまな展示施設があるが、中でも人気を博しているのが4D映画館だ。
劇中にいるような臨場感
4Dとは、3D映像(平面に奥行きが加わった立体的な映像)のさらに先、「体験型」の映画上映システムのこと。座席が遊園地のアトラクションのように劇中のシーンに連動する形で上下、前後、左右に動いたり、劇場内に設置されたファンから風や水しぶきを起こして雨や霧、嵐を表現したり、照明をフラッシュのようにたいて爆発や雷鳴を再現したりと、さまざまな特殊効果を使って観客がまるで映画の中にいるような臨場感を得られるのが特徴となっている。
現在、4D映画館で上映されているのはCG(コンピュータグラフィックス)による全12作品。いずれも上映時間が3分から5分と短めだが、すべてオリジナル作品だ。たとえば、海の中の世界を描いた作品では、色とりどりの魚やウミガメといった生き物たちとともに海中を泳ぐという疑似体験ができる。「冒険世界への旅」と題された作品では、ジェットコースターに乗りながらの臨場感あふれるアドベンチャー体験がウリとなっている。朝鮮戦争時の大田解放戦闘をイメージした映像では、朝鮮人民軍の戦闘機のパイロットになった気分で、空からの迫力ある戦闘シーンを体感できる。
作品は木蘭ビデオ社などが制作している。
「目で観るだけの映画」から「体全体で感じる映画」へ―。最先端の技術を駆使した、これまでにない映画体験ができるとあって、連日大勢の人々が4D映画館を訪れている。
座席数は12席×4列の計48席。黄色の専用メガネをかけてシートに身を任せれば、非日常の世界へいざなってくれる。専属のスタッフが鑑賞中の観客のエキサイティングしたようすをカメラに収め、映画の3D画面と合成してプリントアウトしてくれる記念写真撮影サービスもある。
アトラクション感覚で楽しめる4D映画館はとくに子どもたちから好評だ。スタッフのパク・チョンギさん(48)は、「子どもたちは新しいものに敏感。私たちが見えなかった部分にも気づいて、思いもよらない意見をくれたりする。それが作品の質の向上にも役立っている」と話す。
開館時間は9時から18時。1回の上映で3作品を鑑賞可能となっている。
同様の映画館は、綾羅人民遊園地(平壌)をはじめ国内各地の遊園地にも設置されている。
先端技術を身近に感じて
開館から2年で平壌を代表する人気スポットとなった科学技術殿堂。電子化された国内外の科学技術資料を閲覧、共有できる電子図書館としての役割に加えて、館内に10あるテーマ別の展示施設が特徴的だ。中でも、科学実験やゲーム感覚のアトラクションを楽しめる体験型の展示が人気で、連日賑わいを見せている。4D映画館もそのうちの一つだ。
ただ、科学技術殿堂は、科学に対する人々の関心を喚起し、社会的に広く科学技術の普及を図ることを目指す施設で、館内にある3Dや4D映画館も来館者に映像や映画上映に関する先端技術を身近で体験して理解を深めてもらうことに第一義的な目的を置いている。映画館の前にはこれらの技術の原理や特徴を記した解説が掲示されており、作品自体の上映時間も短めだ。「決して商業的利益の追求が目的ではない」とスタッフのパク・チョンギさんは話す。
本格的な3D・4D映画を制作・上映するには莫大なコストがかかる。パクさんいわく、わずか数分の劇場上映用の映像を作るだけでも、少なくない人員とお金と時間がかかっている。2時間のオリジナル長編映画を4Dで上映するといったレベルにはいたっていないが、この分野の技術開発は進められているという。CG作品以外にも3Dカメラで国内の名勝地を撮影した映像作品も制作している。4D映画館の動く座席や特殊効果装置は海外から取り寄せているが、それらを動かすソフトは自前で開発したものを使っているという。
「最近は人々の目も肥えていて、来館者から厳しい声も寄せられます。生半可な作品では満足してもらえません」とパクさん。しかし、このような利用者たちの声に耳を傾けることがさらなる制作の原動力になっているとか。今後は映像の質にこだわった本格的な作品を制作して、上映作品数も増やしていきたいという。
(朝鮮新報)