日本の市民団体、引き続き抗議/石川県知事の暴言に対し
2017年07月01日 10:00 主要ニュース石川県知事の暴言(6月21日)に対して、日本人士らが引き続き抗議文を発表している。(7/1、3件追加)
石川県知事 谷本正憲 殿
貴殿の発言に抗議し、謝罪を求めます
私たち朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン(略称:ハンクネット)は、1990年代後半に朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)が自然災害と社会主義圏の崩壊によって深刻な食糧危機に陥り、多くの朝鮮人が飢餓状態に陥っていた時期に、朝鮮の乳幼児に粉ミルク支援を始めた市民団体です。以来、20年近くにわたって活動を続けてきました。
谷本正憲石川県知事は去る6月21日、朝鮮のミサイル実験に関連して「兵糧攻めにして、北朝鮮国民を餓死させなければいけない」との発言をされました。
これは朝鮮人を人間として認めず、自分さえよければ相手は殺してもいいという意味であり、日本国憲法と国際人権規約の精神に真っ向から反し、首長としての資格を疑わせるに足る、殺人と戦争を肯定する問題発言と言わざるをえません。
そもそも朝鮮のミサイル実験について言うのであれば、挑発し脅威を与えているのは、朝鮮の目と鼻の先で先制攻撃を想定した実戦さながらの軍事演習を繰り返すアメリカと、基地の提供や共同訓練などでそれに協力する日本であって、朝鮮ではありません。朝鮮戦争の休戦協定に違反して韓国に基地を置いて駐留を続け、朝鮮が求め続ける平和協定の締結を拒み、軍事的緊張を作り出しているのはアメリカの方です。朝鮮側は、ミサイル実験は国土防衛のための対抗措置であると明言しており、日本の原発を狙うなどとは言っていません。
日本政府と自治体は、アメリカとの共同軍事演習に加わって日本を朝鮮との戦争に引きずり込むのではなく、アメリカに対して、軍事的対決ではなく、朝鮮との平和協定を結ぶよう全力で説得すべきです。また、根拠もなく朝鮮があたかも日本の原発を狙っているような発言をしたり、ミサイル避難訓練を実施するなどして、いたずらに県民の危機感や隣国に対する敵愾心を煽るべきではありません。
日本は朝鮮を36年間にわたって植民地支配をし、多大な人的・物的損害を与えました。また、朝鮮戦争ではアメリカに協力して数百万人の朝鮮人の命を奪うことに手を貸しました。日本国民はそれらの加害について反省・謝罪・賠償をし、そのうえで対話による平和外交を通じて諸問題の解決に当たるべきです。制裁が何の解決にもつながらず、ただ東アジアに軍事的緊張をもたらすだけであることは、これまでの経過でも明らかです。
このたびの谷本正憲石川県知事の「北朝鮮国民を餓死させなければいけない」という発言は、朝鮮を植民地にしていた時代と変わらない朝鮮人に対する排外意識に基づくものであり、自治体の長として市民の民族差別を煽り立て、朝鮮人の人権を蹂躪するものに他なりません。
私たちハンクネット・ジャパンは、谷本正憲知事の発言に強く抗議するとともに、人権蹂躪発言について朝鮮半島と日本に暮らす朝鮮人に対して真摯に謝罪することを求めます。
2017年6月26日
朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン(略称:ハンクネット)
世話人代表 竹本昇
「餓死」発言への抗議文
石川県知事・谷本正憲殿
新聞の報道によれば、知事は6月21日、金沢市内で開かれた県町長会の総会で、北朝鮮のミサイルをめぐり、以下のように発言されたそうです。「兵糧攻めにして、北朝鮮国民を餓死させなければいけない」。
私たちは、「北朝鮮国民を餓死させ」るというご発言に、抗議を致します。
そもそも地方自治体の長には、住民の命と健康を守る義務があります。自国であろうと他国であろうと、人々の生命の尊厳を守る政策をとるのは、自明の理です。命は平等です。他国の住民を餓死させる意思表明などは、とってはならない言語道断の政策です。
アジアの民衆、そして朝鮮民主主義人民共和国の国民も、かつて日本の植民地支配と侵略で、餓死と苦難を経験しました。2015年8月、安倍総理は談話を発表しました。この「安倍談話」は、私たちの視点からは不十分ではありますが、「侵略」「お詫び」の言葉を込めながら、歴史への反省の視点を次のように述べています。
先の戦争は、日本の「行き詰まりを力によって打開しようとした過去」であり、「戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」。更には「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」と述べ、日本が、餓死、「食糧難」、「苦しみ」、「犠牲」を押しつけた加害の歴史を「忘れてはな」らない、と強調しています。
知事の「餓死」を強制するご発言は、こうした日本の侵略戦争に対する反省のなさ、歴史認識の貧困を示すものです。
2000年8月に、金沢市内の護国神社の境内に、大東亜聖戦大碑という碑が建設されました。先の戦争を「聖戦」ととらえるこの碑は、県中島土木部長によれば、もともと「違法状態」(県議会土木企業委員会、「北國新聞」2001.6.25)にありました。その理由は、土木部長自身が「申請があった以前に着工したことを確認した」(同)からです。
杉本県副知事は、以下のように反省の弁を表明しています。「碑文の内容について厳しいチェックを事前にしなかったことは県の落ち度と認めざるをえない」(「朝日新聞」2001.7.4)そして、「今後は歴史認識でも考慮した判断が必要だろう」(同)と述べています。
谷本知事は、記者会見で「碑文の聖戦は政府見解とは明らかに違う。(個人的には)行き過ぎた表現だと思う」(「北陸中日新聞」2001.6.13)と、見解を表明されています。
「聖戦大碑」撤去の会はこうしたご発言を踏まえて、2001年12月25日に4点にわたる「申し入れ書」を知事あてに提出致しました。その中の第4点目は、「公民館等を中心とする地域での社会教育、行政職員の歴史認識学習事業を積極的に展開する」でした。
私たちは、15年以上を経た今日も、依然としてご回答をいただいてはおりません。
そして、もし先の第4点目の「行政職員の歴史認識学習事業」を、知事ご本人が「積極的に」推進し、知事ご自身が歴史認識を深めておられれば、かつて餓死させた民衆をそれだけでは足りず、再度、今度は率先して「餓死させ」る視点を披露する事態には到らなかったと思います。アジアの市民・国民に、再び「負の記憶」を呼び覚ます暴言として、座視するわけにはいきません。
知事は、撤回されたそうですが、撤回で済まされない問題だと考えます。
私たちは、知事に以下の点を要請致します。
①北朝鮮市民に対して、明確に、謝罪をする。これを、マスコミ、広報を通じて発表する。
②県が推進する国際交流事業の中に、「歴史認識学習事業」を組み込み、知事が率先してこれに取り組む。
「大東亜聖戦大碑」の撤去を求め、戦争の美化を許さない会(「聖戦大碑」撤去の会)
共同代表 角三外広
森憲一
2017年6月26日
2017年6月27日
石川県知事
谷本正憲 様
日本と南北朝鮮との友好を進める会
代表 三原誠介
違法なヘイト発言に抗議し引責辞任の申し入れ
貴職におかれましては、県民の命と暮らしを守るためご尽力いただいていることに敬意を表します。
私どもは、岡山県内において在日朝鮮人と日本人との友好・交流を進めている団体です。
さて、去る6月21日の貴職の発言が全国紙に掲載され、いささか驚いていると共に、公職にある知事が公式の場においてこうした発言をされたことに対し、ここに抗議の意を表します。
昨年6月3日公布・施行されました「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(略称:ヘイトスピーチ解消法)は、日本が国連の人種差別撤廃条約加入後に日本政府に対し法整備を求める再三再四の勧告が有り、2020年の東京オリンピック開催のため、これまで国内で規制がなかったヘイトスピーチを規制する内容です。
理念法とはいえ、法律の中で国と自治体に対し「不当な差別的言動の解消について広報・啓発等の取組」を義務付けています。特に国は同日(6月3日付)で各県に対して警察庁通達及び文部科学省通知を発し、法の趣旨の周知といわゆるヘイトスピーチといわれる「不当な差別的言動の解消に向けた取組に寄与されたい」としていることはご承知の通りです。
貴職の発言は、県民に対して範となるべき知事として、また、この法律の趣旨に照らして違法と指弾されるべき事案です。
ナチス・ドイツのホロコースト大虐殺や関東大震災時における朝鮮人大虐殺を彷彿とさせる「北朝鮮国民を餓死させなければいけない」と報じられていることが事実であるならば、人の命を軽視する発言は、いくら発言撤回をしたとはいえ、ヘイトスピーチ解消法の法を遵守し広報・啓発の義務を負う立場にある自治体の長としてふさわしくありません。
はばかりながら、貴職に対しあらためて丁寧な謝罪と引責辞任があってしかるべきかと、ここに申し入れます。
以上
2017年6月23日
石川県知事
谷本 正憲 様
福岡県日朝友好協会
会長 北原守
「北朝鮮国民餓死を」暴言に対する抗議文
私たちは、日朝国交正常化や日朝友好運動推進に賛同する者で組織する福岡県日朝友好協会である。今回の貴職による「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させないといけない」という発言は、憲法前文で謳う「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という理念・精神に反する暴言であり、言語道断である。速やかな謝罪と、その責任を早急に果たされることを望むものである。
どんなことがあろうとも、また、どんな人であろうとも今回の「餓死させる」という言葉は使ってはいけないし、ましてや、「国民・県民の生命と生活を守る」ことを責務としている、県知事という公職にありながらの暴言は決して容認できない。
さらに、「餓死させる」とは、言い換えれば「殺人計画」「殺人予告」ともとらえられるものである。したがって、直ちに、謝罪すると共に責任の明確化などを強く求め、抗議する。
2017年6月28日
石川県知事 谷本正憲 様
日朝国交正常化をすすめる神奈川県民の会
事務局長 高梨晃嘉
谷本知事の暴言に対する抗議と謝罪要求
読売新聞等で報道された谷本知事の「北朝鮮国民を餓死させないといけない」という発言は、「大虐殺を彷彿させる」発言であり、到底許される発言ではありません。まして公職の身であるものの発言であり、その責任は極めて大きなものであります。谷本知事が翌日になって発言を撤回したからと言ってそのことで発言の責任が果たされたわけではありません。撤回の理由も曖昧なままです。
私たち「神奈川県民の会」は、ここに谷本知事の、無責任極まりない、差別をも助長する、「大虐殺のすすめ」ともいうべき発言に断固抗議すると共に、石川県民をはじめ在日朝鮮の方々に「なぜ発言が撤回されなければならないか」を明確にして謝罪することをつよく要請します。
米朝核ミサイル危機は、朝鮮戦争の延長線上にあり、朝鮮の核武装は半世紀以上続く米国の核戦争威嚇に起因しており、この危機について我が国(自治体を含む)がとる対応は、危機を煽るのではなく、米国へ朝米協議による解決の働きかけと共に日朝国交正常化への話合いを早急に再開させることではないでしょうか。
谷本知事の発言は、朝鮮半島と日本とのかかわりと共に米朝対立の歴史認識についても極めて不十分であることがうかがわれ、しかも発言は危機を煽るだけではなく、「志賀原発を狙う暴挙」などとデマゴギーをふくむプロパガンダに他ならないというほかありません。
米朝の衝突の回避さらに偶発的衝突の可能性さえも最小化していく上でも、谷本知事には、自らの発言の誤りに真摯に向き合い、危機を煽り対決(衝突)へことをすすめるのではなく、「対話による解決」の道を石川県民とともに歩まれんことをつよく要請します。
以上
(朝鮮新報)
関連記事
- 「敵愾心を意図的に煽っている」/総聯本部委員長らによる石川県知事への抗議文 2017/06/24
- 日本人士らが抗議文/石川県知事の暴言に対し 2017/06/24
- 日本の市民団体、引き続き抗議/石川県知事の暴言に対し 2017/07/01