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〈70年の自負、100年への自信⑫〉朝大にビジネス界から熱視線

2025年12月04日 10:20 寄稿

朝大キャリア支援センターの活動

朝鮮大学校は2026年に創立70周年を迎えます。当欄では、大学が歩んできた道のりや現在の教育内容、活躍している卒業生、70周年に向けた取り組みなどを多角的に紹介します。執筆は朝大の教員、関係者が担当します。(月1回掲載)

朝大卒業生の存在感

世界や日本のビジネスシーンにおいて、朝鮮大学校卒業生の存在感がかつてなく高まっている。

「民間版の世界銀行」を目標に、マイクロファイナンスの分野を世界的にけん引し、日本で最も傑出した起業家として世界的ビジネス雑誌の表紙を飾った卒業生や、世界最大の食品企業において誰もが知る商品を統括していたり、日本を代表する新事業創出エンジンと知られる上場企業の新規事業を立ち上げた卒業生もいる。また、上場企業のグループ会社社長にヘッドハンティングされたり、世界最大手外資系保険会社でトップの営業成績を上げたり、キャリア支援センター担当の私が把握しているだけでも、朝大卒業生たちの世界や日本のビジネスシーンでの活躍は枚挙にいとまがない。

民族教育過程で培った確固たる自分軸に加えて、朝大の寄宿舎生活や朝青運動のなかで培った人間力やコミュニケーション力などがいかんなく発揮されている。グローバル企業や日本の有名企業においても、バックグランドの特殊性は一般とは違うレアな価値として認められつつあり、成長を目指す同胞企業においても、パワフルで突破力のある朝大卒業生は常に渇望されてきた。

にもかかわらず、「朝大は就職において不利」といった固定観念が同胞社会の中で根強い。

「人生100年」の時代に入り、仕事の側面から見た人生ともいえるキャリアは長くなる。新卒でどこに就職するかより、軸を持ちながら力を発揮して社会に貢献しキャリアを築き上げていくプロセスが重要となってきている。そんな環境下で、朝大卒業生とグローバル企業、日本企業、同胞企業をつなげる存在として、朝大キャリア支援センターは「就職支援センター」として2018年から活動をスタートした。

就職支援からキャリア支援へ

就職支援センターは、朝大卒業生を求める企業の問い合わせ対応や情報収集、ネットワーク構築、さらにはインターンシップの企画・提案など、朝大生のための就職の経路を整備するための活動を行ってきた。

その傍ら、学生向けにさまざまな分野で活躍する卒業生たちを招いたセミナーや座談会、マネジメントの視点を学ぶためのゲーム型の研修「マネジメントゲーム」などを企画。業界研究、企業研究のためのゼミ形式の勉強会では、朝大生に開拓が期待される業種やビジネスはどんなものか、学生らと議論を深めている。

「キャリア支援センター」が企画した工場見学ツアー参加者たち

2023年以降は、学生の就職支援活動をさらに本格的に推し進めるための土台構築に取り組んだ。無料職業紹介事業に係る届出を行い、24年4月に東京都労働局により受理された。同年度には、海外留学を経て日本に戻った卒業生がキャリア支援センターのあっせんで新進気鋭の同胞スタートアップに入ることになり、無料職業紹介の第一号案件となった。

一方でスタッフの拡充も図ってきた。国家資格である「キャリアコンサルタント」や臨床心理士の資格を持つ専門スタッフを配し、学生のキャリア相談やカウンセリングの専門性も高めている。

25年度からは部署名を「キャリア支援センター」へと変更し、①学生向けの本格的なキャリア教育とキャリア支援、②企業向けのキャリアの経路開拓と紹介・あっせんを二本柱として進める体制を整えた。

10月からは1年生向けの「キャリア基礎Ⅰ」の授業を全学部共通の選択授業として開始し、キャリアとかかわる教育内容がカリキュラムとして行われるようになった。

マネジメントゲーム研修のようす

現在6つの学部、すなわち政治経済、文学歴史、経営、外国語、理工、短期学部から40人の学生が受講している。キャリアの考え方や重要性、シートによる自己分析、ゲストによる経験談などさまざまな形式で授業が進められている。

今後、キャリア支援センターはさらに機能を高め、同胞たちがご子息のキャリアの面でも安心して任せられる大学になるために尽力していく所存だ。

(趙丹・経営学部教授)

すぐにチームの成果に貢献できた/外資系総合コンサル シン・ドゥオクさん

シン・ドゥオクさん(左から3番目)を招いた勉強会

シン・ドゥオクさんは、朝大理学部を卒業した後、研究院に進学し、門戸が開けたばかりの国立大学の大学院を目指した。F1マシンの設計・開発を夢見て、流体力学を本格的に学びたかったという。

「受かる気満々で2年にわたりチャレンジしたものの良い結果は得られず、いったん挫折。流れに任せてそこで全力を尽くせばチャンスは巡ってくると信じ、私立の大学院に進学した。修士課程では研究科でもトップの成績を収め、外資系総合コンサル企業に入ることになった」

外資系コンサルでは、日本の大手企業のいくつかの基盤システムの導入にあたる仕事に携わった。いくつものチームに分かれそれぞれが役割を果たしながら巨大かつ複雑なシステムを作り上げる。優秀な人だけが集まっても仕事はなかなか前に進まない。クライアントの真の課題や要望を汲み取ることが重要だし、他チームとの情報共有や連携も大事だ。そのための人との対話や調整は、意外と誰もができるわけではない。

「コミュニケーションに長けた人は新卒スタート時点では周りにまったくいなかった。ウリハッキョと朝大の寮生活で鍛えられていたので、特に意識することもなく自然に振舞うだけで、すぐにチームの成果に貢献できた」

そうした貢献が評価され、今ではいくつもの案件を管理する立場に立った。世界最大級の総合コンサル会社で、朝大で培った人間力が余すところなく発揮されている。(趙)

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