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ウリハッキョは今~道内唯一の拠点・北海道初中高~(中)北海道のセセデたち

2024年07月01日 13:10 民族教育

共通の思いは「学校のために」

昨年1月、北海道民族教育対策委員会の討議機関として設けられた「セセデ民族教育協議会」(以下、セセデ協議会)。同協議会が主管する学生数拡大事業の主な取り組みに、「幼児教室」および学齢前児童を対象とするイベントへの注力、学校の宣伝広報がある。これらの活動に勤しむのは主に女性同盟や青商会の子育て世代と朝青員からなる北海道のセセデ(次代)たちだ。

民族教育の入り口

今年度に行われた幼児教室のようす(写真はすべて提供)

各地で準正規教育網の強化のためのさまざまな対策がとられる中、北海道でもその一環として00年代に入り幼児教室が開講した。札幌支部や北海道初中高の教員たちが担い運営してきた教室は、昨年から女性同盟本部の協力のもと営まれている。

セセデ協議会の発足後、真っ先に議題にあがったのが、児童・生徒募集につながるこの幼児教室の役割を強化することだった。幼児教室はいま、北海道初中高での長い教員経験があり、昨年以降、女性同盟本部の職員として従事する崔美澪さん(女性同盟北海道本部・組織部副部長、幼児教室主任)を専任スタッフに、その他教員経験を持つ3~4人の同胞たちを中心に運営されている。

北海道初中高の敷地内にある教室は月に2回、年間で20回ほど開かれ、主に4歳から6歳までの幼児たちが通っている。募集そのものは3歳児も対象だが、その場合は保護者同伴での参加を募っており、現在は幼児一人ひとりに目が行き届くよう参加人数に基づいてスタッフの人数を決め、運営しているという。

昨年度幼児教室の最終活動日

「セセデ協議会発足後の変化は、幼児教室の経験を児童・生徒募集事業に活かすという明確な目標に沿って、教室そのものの運営方針や内容を検討し対策を講じるようになったことだ」

主任を務める崔美澪さんはそう話す。また運営においては、セセデ協議会を媒介して本部傘下の団体に滞りなく現状が共有されるようになったため、「幼児教室が講師たちだけで解決・完結するような空間ではなく、同胞コミュニティの関心と協力の中で営まれるようになった」。

多方で、学齢前幼児を対象にした「オリニサマーフェスティバル」や、ミレ会(女性同盟札幌支部が主管するセセデ女性たちとオンマ・オリニたちのサークル)が主催するハロウィン行事への参加数が着実に増えるなど、教室がもたらした目に見える効果もあった。

幼児教室では、参加者たちがウリハッキョをより身近に感じる空間にするため、朝鮮語のあいさつや学びの時間、歌や絵本の読み聞かせの時間を設けるのと同時に、思いやりの気持ちや想像力、知的好奇心を育む情操教育にも注力する。また学校を身近に感じてもらうための対策として、北海道初中高の始業に合わせて年度初めの教室開講日を設定。学校と共にスタートを切る意味で、毎年4月の入学式で参加者向けに年間日程を配布し、未参加者への広報も同時期から開始するのだという。「学校同様に、幼児たちへの取り組みが年間を通じて計画的に行われることを伝える意図がある」。

民族教育へとつながる空間―。この言葉を体現するように、今年1年生になった児童は、3歳の頃から4年間、この幼児教室に通った。

「困難は言い出したらキリがないが、そんな中でも教室にわが子を送った保護者たちが北海道ハッキョへの入学を決めてくれた。1年生に迎えられて本当にうれしかった」(崔さん)。

主導・実利・実践で

青商会が主催する「未来授業」には、在校生たちが可能性を広げ、在日朝鮮人として明るい未来に向けて歩んでほしいとの思いが込められている

学校支援活動においては青商会そして朝青が一翼を担っている。今期、北海道青商会では「새시대 이어!(新時代イオ!)」をスローガンに、①主導・実利・実践で新時代を切り拓いていく、②同胞たちと共に青商会の歴史を繋ぐ、③北海道青商会結成30周年に継いでいくー―ための各種取り組みを推進している。

とりわけ青商会では、民族教育支援の取り組みとして、今年で22回を数えるチャリティゴルフコンペ「コマカップ」のほか、前々期から始まった学校教員と青商会による「未来会議」(学校の方針や目標、現状共有の場)、ファミリーイベントや今期から始まったおむつ定期便(おむつ世代の子どもを育てる家庭に、定期的におむつをプレゼントする取り組み)など現状にあった支援の在り方を試行錯誤し実践の日々を送る。

北海道青商会の李東喆会長は、この間のさまざまな実践において「学校単体での運営が厳しくなる中、オール同胞で支援する形をどううまく構築し、広めていくかを絶えず協議している」と話す。その一環で同青商会では、会員たちに向けて「同胞たちの集まりがあればまずは積極的に顔を出し、同様に学校にも顔を出そう」と強調するのだという。

青商会が主催する「未来授業」には、在校生たちが可能性を広げ、在日朝鮮人として明るい未来に向けて歩んでほしいとの思いが込められている

青商会会員たちもまた、それぞれのきっかけや理由は違えど、「学校のために」という思いが、一人ひとりの精力的な活動の背景にある。

「現校長が北海道ハッキョに新任で来た当時、初めて担任したのが自分たちの学年だった。それもあり、これからも一緒にウリハッキョを守っていきたい」(李会長)

伝統の愛校活動

学校伝統の大旗を、今年から茨城と合同生活を送る朝高生たちのために作成。朝青員と生徒たちが4ヵ月かけて仕上げた。

では、朝青はどうか。その朝青の活躍を感じられるエピソードについて、北海道初中高の教員で、朝青札幌・清田班の金莉瑛さんが聞かせてくれた。金さんによると5月に入り同校では、5月25日の総聯結成日を記念し、中級部生が初級部生に対し学習会を行った。その際、こんなやり取りがあったという。

「中級部生が『傘下団体にはどのようなものがある?』と聞いた。生徒たちが求めていた答えは、女性同盟、商工会、青商会など。すると、まさかの『朝青・清田班!』との声が上がった。微笑ましくも拍子抜けしました」(金さん)。

学校伝統の大旗を、今年から茨城と合同生活を送る朝高生たちのために作成。朝青員と生徒たちが4ヵ月かけて仕上げた。

児童たちが朝青のいち班を度々言及するのは理由があった。

朝青札幌支部には現在、清田、豊平、中央の3つの班があり、それぞれ民族教育、同胞第一主義、民族性固守というテーマを掲げ、朝青運動を行っている。このうち最も多くの同盟員を網羅するのが、学校付近を拠点とする清田班だ。同班が、愛校活動に注力し始めたのは2016年の学校創立55年がきっかけ。いまでは他地域でも行われるようになった朝青員らによる「朝青給食」も、この清田班がはじまりだと朝青北海道本部の呉慶俊委員長は誇らしげに語る。

愛校活動に注力してきた清田班では、今期に入り、さらに活動が多様化した。「朝青給食」や一口運動への積極的な参加に加え、学芸会用の大道具をつくったり、北海道初中高の高3が伝統的に制作してきた大旗を児童・生徒たちと共につくり卒業式の場で披露した。この他にも、校内マラソン大会の際には仕事を休み、一人で走る生徒のために伴走する斬新な企画も。同班には代々、金莉瑛さんのように、学校に隣接する寮で生活する他地域出身の教員たちが複数いる。それを強みに、「教員の立場も生かして、朝青活動と学校それぞれにWin-Winになるよう、学校の現状に即した活動内容を提案している」(金莉瑛さん)。

愛校活動を通じて、清田班ではこの間、新たに4人が同盟員として加わった。

今では伝統となった「朝青給食」

北海道初中高の卒業生で、今期から清田班班長を務める金将成さんは「すべては学校から求められるものをする。そのスタンスでやってきたし、これからもそうしたい」と話す。

その真意は、これまで行った活動の目的すべてが「学校のために」に一貫しているから。「(朝青活動で)辛かったことは一度もない。むしろ還元したいと思う場所、人たちのためにやっているから楽しい」(金さん)。

たくさんの同胞たちの思いが向けられる北海道初中高。連載・下では、その学校を輝かせる一心で在校生たちの教育・教養に励む教員たちに迫る。

(韓賢珠)

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