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衛星と「ミサイル」

2024年06月19日 10:00 取材ノート

「ミサイル発射、ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、または地下に避難してください」

5月27日夜、放送中の番組画面が切り替わり物々しい警報が流れた。日本政府によるJアラートの発令だ。数分後に解除され、各局のアナウンサーたちはこう伝える。「先ほどのミサイルは、我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します」

極めて巧妙だ。発令直後は「ミサイル発射」と説明し避難を呼びかけながら、それに続く文章は「ミサイルが発射されたものとみられる」との表現。アラートが解除されると、またもや「先ほどのミサイルは…」と、もはや断定している。

加えて、当日の官房長官会見では「衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射」と発表。何が発射されたのか、主語がない。しかし発言はこう続く。「これまでの度重なるミサイル発射も含め…」。

こうした政府の動きに合わせ、メディアの対応も危機感を煽るのに一躍買っている。当時、記事には「北朝鮮が弾道ミサイル、発射直後に爆発か」「北朝鮮ミサイル『わが国に飛来せず』避難呼びかけ解除」といった見出しが並んだが、その一方で、朝鮮が衛星打ち上げを事前通告した際には、「『衛星ロケット』打ち上げ予告」「『人工衛星』打ち上げを通報」などと報じている。

衛星として通報があったものを、検証されていない状態で「ミサイル」と断定報道に近い発信をする。

検証がお粗末なのか、ダブルスタンダードが「王道」なのか。どちらにせよ、メディアの在り方には違和感を禁じ得ない。

(賢)

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