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わが心よ、歌となりエルファとなれ/金サラン

2024年06月17日 16:40 それぞれの四季

悲しい時、嬉しい時、いつもそばに歌があった。ひとりっ子で留守番も多かった子ども時代、寂しさや怖さを歌がなぐさめてくれた。私が4歳の時に亡くなった父方の在日一世のハルモニとの唯一の思い出は、所かまわず常に歌い踊り話す私を「あごから生まれたアゴちゃんや」と言っていたこと。一時は声楽の道も考えたがプロの世界は厳しく、努力も覚悟もできず、歌から逃げた。

民族を取り戻すなかで歌に再会した。朝鮮民謡、朝鮮学校の歌、朝鮮人が集まる場は心揺さぶられる音楽であふれている。言葉にできない悲しみや喜びを現したくて、自分が今、ここに生きていることを実感し、生かされていることへの感謝を伝えたくて、再び歌うことにした。

月に一度、京都東九条のNPO法人京都コリアン生活センター「エルファ」で歌い始めて季節が一周した。ハルモニ、ハラボジたちとの時間は歌の楽しさを思い出させるとともに生きる強さを教えてくれる。私を見つめるまなざしに突き動かされ、歌の合間に日々感じる生きづらさを吐露すると、共感と慈愛に満ちた目で話を聴き「がんばり!」と励ましてくれる。こんなに温かく力強い励ましの裏に各々どんな人生があったのだろう。このハルモニ、ハラボジのように、その施設の名のとおり「アイゴー」が「エルファ」になっていく生き方を私もしていきたい。わたしを生きるために歌い続けたい。

(兵庫県尼崎市在住)

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