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表現者として/玄明淑

2024年05月17日 09:50 それぞれの四季

昨年末、意を決して開催した個展「温故知新」のメインテーマは済州四・三であった。二十代の頃、一度取り組んだテーマであったが酷評され封印、四・三70年を迎えた春に書いた「済州四・三抗争」は、それまで重ねてきた学びや葛藤をどうしても表出したくて、作品としての表現方法に迷いながらも、書き記したい衝動を抑えられず制作したものだった。

その後も書画作品としての表現を模索しながら、沈黙を強いられた悲しみと無念にどうすれば向き合えるのか…犠牲者を記憶するとはどういうことなのか、3世の私が今できることは何なのか、表現者として鎮魂の想いを込めるにはどうすればいいのだろうか何年も考え続けていた。それを表出するために制作に取り組んだ。

「悲しみから記憶へ、記憶から明日へ」はそうして生まれた作品である。理由も分からぬまま老若男女問わず無残に殺された島民、命からがら密航船に乗り日本に逃げてきた在日1世もまた同じく犠牲者であり、植民地政策の延長にあるこの地で、民族差別の中でもたくましく生き延びてきた当事者の生き様に光を当てたい一心で制作した。

大阪には済州島出身の同胞が多い。作品の前に長らく足を止め涙ぐまれていた2世のオルシンたちと言葉を交わしながら、安堵の気持ちと共鳴する喜びで胸がいっぱいになった。改めて表現とは何か考えさせられた。

(大阪中高美術教員)

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