イルムは私の生き方／金サラン

「木村愛」という名で30余年生きてきた私は、数年前に初めて参加したある青年民族団体で「金サラン」と呼ばれるようになった。朝鮮人として認めてもらえた気持ちがした。

数カ月後の、2022年5月。同胞の友人と参加したウトロ平和祈念館のオープニングイベント。ウトロ農楽隊と東九条マダンメンバーによる農楽に合わせ皆が笑顔で踊る光景に、めまいがするほど打ちのめされた。自分を構成する国籍・言葉・文化・名前。どこにも朝鮮を見いだせない。何より国籍が日本である以上、私は限りなく加害側の存在であり朝鮮人にも日本人にもなりきれない中途半端な存在だと思い知らされた。

生き方について悩んだ末、自己満足するだけではなく、朝鮮人として眼差されることを引き受けようと思った。誰にどう言われようが、私の朝鮮を大切にし、交差する差別構造の中で被害者でも加害者でもある私の構成要素すべてを赦し解放していきたい。あらゆる差別をゆるさない世の中を作る主体になりたい。そう思い、職場をはじめあらゆる場で「金」を名乗るようになった。決断したものの、親への申し訳なさや周囲の反応に一喜一憂する中、「사랑하는 우리 사랑」と誕生日を祝ってもらった時、嬉しさと切なさがこみ上げた。金サランと名乗ってもうすぐ3回目の誕生日。社会のなかでどう在るのか、問い続けていきたい。

（兵庫県尼崎市在住）