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映像による支配への抵抗

2023年11月16日 16:26 取材ノート

7日の試写会で日本初上映となったドキュメンタリー映画「WARmericaの運命」(2023年、南朝鮮)には、世界中で戦争や反人倫犯罪を繰り返す米国の覇権が、各国での民衆闘争と世界秩序の多極化によって急速に崩壊している現実が見事に描かれていた。本作品は、現在の映画産業に対する対抗軸の一つを示している。

米国の著名な2人の映画研究者は共著『支配と抵抗の映像文化』で、西洋中心主義が根強い映画産業は帝国主義の言説を再生産していると指摘する。同著で述べられているように、さまざまなジャンルの映画で「西欧文明」対「他者」の二項対立的な図式が描かれることで、米欧諸国が「自由」や「民主主義」の名のもとで行う第三世界への戦争や介入、マイノリティーに対する価値観の押し付けを正当化する言説が醸成されてきた。西側諸国、とりわけ米国は、映画やマスメディアなどの媒体を通じて非西側諸国に自国の文化を大量に輸出しながら、各国固有の価値観やアイデンティティを破壊し、米欧モデルへの適合を促す「文化帝国主義」なる支配構造を作り上げてきた。

しかし前述の映画は、アメリカ大陸の先住民に対する虐殺に始まり、朝鮮戦争やアフガニスタン戦争、ウクライナで代理戦争を繰り広げる今日に至るまでの米国の歴史を紹介しながら、映像メディアを通じて米帝の支配と暴力の実態を正面から暴き出している。映画には南の活動家や知識人はもとより、米国が引き起こした戦争や紛争によって愛する人を失った各国人民たちの声が紹介されている。「お前たちが1人を殺せば、他の10人が闘いに立ち上がるということを肝に銘じろ」。兄弟との死別後に米欧メディアに放った男性の言葉は、世界の民衆が抱く心の叫びであろう。

(徳)

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