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〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉追悼と責任追及の集会【動画】

2023年09月07日 13:39 動画 歴史  

続く蔑視と差別に政府は責任を

関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を偲び、参加者全員で黙とうをささげた。

1日、東京都中央区の銀座ブロッサムで、関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動実行委員会(以下、実行委)が主催する集会が開かれた。会場には、日本国内のみならず、南朝鮮や米国から駆けつけた同胞と日本市民ら約800人が集まった。

朝鮮大学校の学生たちの朗読劇

集会に先立ち、舞台上では、朝鮮大学校の学生たちが「百年の残響、乱響―1923/2023 証言と記録のコラージュ―」と題する朗読劇を披露、参加者たちは100年前の惨禍に思いを馳せた。

集会ではまず、関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を偲び、参加者全員で黙とうをささげた。

主催者を代表し、総聯中央の南昇祐副議長、日朝友好促進東京議員連絡会の保坂正仁共同代表があいさつした。

南昇祐副議長は、各界の人々が参加した勉強会やフィールドワーク、日本当局や東京都に対する抗議と要請活動、記者会見をはじめとするメディアへの働きかけなど、今年1月に実行委を発足して以降、同実行委を中心に行ってきた取り組みに言及。「こうした活動があり、日本の世論が変わりつつあると感じる」として昨今、当時の虐殺に関する歴史的事実を、日本政府が認めなくてはならないとする議論が広まっていると述べた。

総聯中央の南昇祐副議長

南昇祐副議長は、「一方で日本政府や都が、これまでの不当な立場を変えようとしない事実は憤激にたえない」と語気を強めながら、朝鮮人虐殺から100年が経過した今日においても、朝鮮民族に対する蔑視や在日朝鮮人への差別・抑圧が続いていると指摘。「日本政府が真相究明と被害者に対する謝罪と賠償を行うよう、また民族教育権をはじめとする在日朝鮮人への差別的政策の是正を求めて、強く連帯し闘いつづけよう」と呼びかけた。

保坂正仁共同代表

また保坂正仁共同代表は、荒川出身の史実作家である故・吉村昭氏の著書『関東大震災』の中で、大震災時に朝鮮人大虐殺があり、その起源が「植民地支配の行き過ぎにあった」と記している点に触れた。そのうえで、「虐殺の史実をなかったことにしよう、資料がないから調べられない、などと臭いものには蓋をする国の発想は断じて許すことはできない」と述べ、「在日朝鮮人への差別が続く中、草の根の闘いを通して一刻も早い問題解決に取り組んでいきたい」とした。

この日の集会には、国会議員や元官僚など日本の要人らも多数参加する中、代表して立憲民主党の近藤昭一衆議院議員が連帯のあいさつをした。

近藤昭一衆議は「自然災害で亡くなった人と、あってはならないデマが広がり、差別の中で虐殺された人については、分けて考えなければならない」と述べた。近藤衆議はまた、無念の気持ちで亡くなった朝鮮人犠牲者たちは、日本の植民地支配のもとで異国の地で生活を送った人々だとしたうえで「政府が過去の事実と向き合い、それを認めるよう、真相究明の運動に連帯していく」と語った。

連帯の挨拶をする近藤昭一衆議院議員

つづいて北南朝鮮からそれぞれ、連帯のあいさつがあった。北側からは、朝鮮人強制連行被害者・遺族協会の連帯の辞が代読され、南側からは関東虐殺100周忌追悼事業推進委員会の李鴻政共同代表(6.15共同宣言実践南側委員会常任代表議長)が登壇し発言した。

李鴻政共同代表は、「真の和解と平和は、帝国主義と軍国主義、植民地主義を克服し、歴史の正義が回復されたとき、はじめて可能になる。歴史否定やわい曲は、別の対立や敵対心を煽り、侵略と紛争の歴史を繰り返す」とした。そのうえで日本政府に対し、国家責任の回避をやめ真相究明と被害者への謝罪を行うこと、日本帝国主義の植民地および戦争犯罪に関する事実を教科書に正しく記述し教育すること、軍事大国化政策を直ちにやめること、平和と平等、共存共生の南・日関係構築のために努力することを求めた。

発言する李鴻政共同代表

“一人の朝鮮人として”

また集会では、実行委の藤本泰成事務局長(フォーラム平和・人権・環境共同代表)が問題提起を行った。

藤本事務局長は発言冒頭、「様々な追悼行事が行われる中、今日の集会ほど在日朝鮮人が参加する追悼行事はない」としながら、この間、追悼と責任追及の取り組みにおいて在日朝鮮人との共闘にこだわったのは、「日本による朝鮮半島の植民地支配にしか、国家的ジェノサイドの原因が見出せないと考えたからだ」と説明した。さらに同氏は、「現在もなお、植民地主義を払拭しきれない国や社会の状況は、日本の将来を大きく閉ざす。100年にあたり日本政府がやるべきことは明らかだ」と述べ、在日朝鮮人と日本人とがしっかりとした絆で結ばれ、日本から植民地主義がなくなることを心から願うとした。

一方、在日朝鮮人遺族と南の遺族(代読)からの証言もあった。

証言をする尹峰雪さん

大震災当時の朝鮮人虐殺について告発し、2003年の対日本政府日弁連勧告をもたらした文戊仙さん(故人)の娘、尹峰雪さん(81)は、在日1世である文さんの生い立ちと日本の植民地支配下で送った生活について語ったうえで、文さんが目撃した光景を証言した。

「母は、大勢の自警団がおじさんの生首を竹槍にさし、行進しているのを目撃した。15歳の少女は、どれだけ悲しく辛く、悔しい思いをしただろうか」。

また文さんが晩年、「生き残った一人の朝鮮人として」当時の虐殺を告発し、人権救済申し立てを行った姿を想起しながら、「日朝、日韓の真の友好親善は、過去を正しく認識し、ただすべきことはただし、互いを平等に認め合うことではじめて実現する。母が老体に鞭を打ち勝ち取った勧告書を、ただの勧告書で終わらせないためにも、今後も日本政府に対し、勧告書の内容を履行するよう強く求めていく」と語った。

「堂々と生きたい」、次世代の思い

東京中高高級部の朴舜豪さん

会場に集まった次世代たちも、100年前の惨禍を、教科書で学ぶ「歴史」ではない、「私たちの歴史」として捉えようとしていた。

「関東大震災という言葉を聞くたびに、朝鮮人大虐殺の悲劇を思い浮かべる。日本の植民地支配下であった虐殺の事実を知ったとき、国がないというのはこんなにもつらく悲しいことなのかと、言葉では言い表せないほど切なくなった。100年の時を経たいま、在日朝鮮人の状況はどう変化したでしょうか」

壇上にあがった東京中高高級部3年の朴舜豪さんは、発言冒頭、客席の参加者たちに向けてそう問いかけた。朴さんは、近年、自然災害が各地で多数起きる中、そのたびにSNSでは「朝鮮人犯罪」に関するデマが繰り返されるなど「100年前をも想起させるのが日本社会の現状」だと強調した。一方、朝鮮学校に通う子どもたちが各種の公的支援制度から排除されるなど、国家的差別が続いている現状を伝えながら「いま日本で親が朝鮮学校に通わすことを選択するとき、乗り越えなければならない壁が多すぎる。けれど私は、朝鮮学校に通えてよかったと思っている。なぜなら、私たち在日朝鮮人が朝鮮人として日本で堂々といき、仲間と共に、どんな困難も助け合い、乗り越え、成長し合えるからだ」と声高に話した。

東京中高の金雅凛さんによる独唱「半月歌」

「在日朝鮮人が置かれている差別に満ちたこの社会が、まともだとは到底思えない。なぜあの時から100年経っても変わらず、朝鮮人差別が続くのか。相手を尊重し認め合う共生社会を築くためにも、日本政府が過去の事実を認めるべきだ。私は絶対に差別に負けたくない、それが朝鮮学校そしてアボジ・オモニが教えてくれたプライドです」(朴さん)

会場では、その後、東京中高の金雅凛さん(高1)による独唱「半月歌」、6.15共同宣言実践米国委員会のキム・スボク代表委員長など各界からのスピーチが続いた。

集会ではまた、南朝鮮の同胞らが追悼詩と独唱のステージを披露。閉会に先立ち、日本政府に対する要請書が採択された。

岸田文雄内閣総理大臣、加藤勝信厚生労働大臣宛の要請書は、日本政府に対し、▼虐殺犠牲者に対する責任を認め謝罪すること、▼虐殺の根本原因が朝鮮半島の植民地支配にあったことを認め、その清算を行うこと、▼虐殺の実態を明らかにすること、▼実態解明のためにすべての公的機関にある関係書類の調査を行うこと、▼虐殺犠牲者への責任を果たすために、真相究明のためのプロジェクトチームの発足―を求めた。

(文・韓賢珠、朴忠信、写真・盧琴順、動画・林里香)

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