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〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉国際シンポジウムに約350人集まる【動画】

2023年09月05日 17:26 動画 歴史

求められる実践、過去清算の事例に学び行動を

 

「関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動」実行委員会が主催する国際シンポジウム「関東大震災朝鮮人虐殺の責任と課題」が2日、東京・千代田区の連合会館で行われた。場内は、日本各地から集まった同胞や日本市民、また南朝鮮の同胞など約350人でいっぱいになった。

この日のシンポは、今年1月、朝鮮人強制連行真相調査団やフォーラム平和・人権・環境(以下、平和フォーラム)など朝・日の各団体と個人が集い発足した同実行委が、関東大震災から100年に際し企画したもの。実行委では発足以来、▼植民地主義の清算およびそれが招来する差別の払拭、▼日本政府による犠牲者への謝罪と真相究明、▼朝鮮半島出身者との連帯―を基本軸として活動を展開してきた。

国際シンポジウム「関東大震災朝鮮人虐殺の責任と課題」が2日、東京・千代田区の連合会館で行われた。

主催者を代表し、元法務大臣の平岡秀夫さん(弁護士)があいさつした。

平岡さんは発言冒頭、100年前の大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者らに哀悼の意を示したうえで、昨今、官房長官が会見の場で「事実関係を把握する記録は見当たらない」と述べるなど朝鮮人虐殺に関する日本政府の対応を非難。「今を生きる日本人の中には個人的に責任を負うべき人はいないかもしれない。しかし、朝鮮人虐殺の事実を明らかにし、その明らかにされた事実に応じて、謝罪など必要な対応をする責任がある」として、今を生きる日本の市民らの責務について問うた。

同氏はまた、前日に開催された「関東大震災100年・朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の集会」に参加し、当時の歴史が清算されない限り、虐殺犠牲者やその遺族にとどまらない多くの在日朝鮮人に苦悩や怒りをもたらし続けると言及。「日本と朝鮮の若者が互いに信頼しあえる社会を築くために、朝鮮人虐殺の問題性がより明確に示される場になれば」と、シンポに向けた期待感を示した。

その後、朝鮮の朝鮮人強制連行被害者・遺族協会(朝鮮人強制連行真相調査団事務局次長の金哲秀さんが代読)と南朝鮮の「関東虐殺100周忌追悼事業実行委員会」から連帯あいさつがあった。

報告する鄭栄桓教授

シンポに先立ち、コーディネーターの佐野通夫・東京純心大教授が発言した。佐野教授は、「関東大震災時の戒厳令をもって在日朝鮮人を『討伐すべき敵』としての『不逞鮮人』とみなす公的なヘイトが、民衆のヘイト感情を掻き立て官民一体のジェノサイドが起きた。またその背景である日本の植民地主義の清算がなされていないことを見逃してはいけない。国家と社会による歴史の忘却、責任からの逃避が戦後日本社会における朝鮮人差別を形作ったのではないか」と問題提起した。つづいて、各報告者からの発言があった。

報告者として、明治学院大の鄭栄桓教授(「関東大震災時の朝鮮人虐殺と『否定論』の諸問題」)、朝鮮大学校の鄭永寿講師(「在日朝鮮人運動による関東大震災朝鮮人虐殺の真相究明・責任追及」)、東京造形大の前田朗名誉教授(「国際法から見た関東大震災ジェノサイド」)が登壇したほか、南朝鮮から淑明女子大の金應教教授(「百年間の証言―韓日の作家と市民がみた関東大震災と朝鮮人虐殺―」)が、米国からイースタン・イリノイ大のリジンヒ教授(『米国における関東虐殺否定論とジェノサイドへの対応』)が登壇した。

その後、報告者5人による総合討論があった。

鄭栄桓教授は、虐殺否定論の最大の問題として「被害者が加害者にさせられる点」をあげ、「これは殺された被害者の名誉を何重にも侵害する大変深刻な議論」だと指摘。関東大震災時の朝鮮人虐殺は、史料が明らかに示す事実にもかかわらず、「記録がないと一言いえばそれによって避けることができる社会状況がある」として、その実例に「選挙で落選することも、批判されることもない政治家が世論を甘くみる現状」、「アジアの人々を蔑む日本社会の状況」を上げた。

総合討論のようす

また同氏は、「南朝鮮の光州では街全体に偽情報は許さないとする意志が貫かれていた」と、民衆抗争を弾圧した政権に対峙する自治体について紹介しながら、「世界的な過去清算、過去の克服の事例に学び、今からでもできることを探し、やっていくべきではないか」と話した。

前田朗教授は、2021年5月にドイツ政府が、20世紀初めに植民地統治したナミビアでの残虐行為を、ジェノサイドであったと認めた事例に言及。「近年でも、過去の国家的な加害事実を認める作業が行われている。これもまた遠い100年前のことだが、国際的に議論がなされ、事実を認め政府が謝罪したわけだ。私たちは、こうした事実についてきちんと考えなくてはならない」。

同氏はさらに、今年9月1日の新聞各紙の社説に触れ、「自分が確認した20の社説のうち、関東大震災時の朝鮮人虐殺に一切言及しなかったのが9紙。この現状を、先ほどの国際的な動きと合わせて、私たちの問題として考えていければ」と話した。

この日のシンポは、日本朝鮮学術教育交流協会の藤野正和会長による閉会のあいさつで幕を閉じた。

(文・韓賢珠、写真・盧琴順、動画・李哲史)

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