【連載】光るやいのちの芽~ハンセン病文学と朝鮮人~④
2023年05月20日 09:00 歴史
【連載】「光るやいのちの芽~ハンセン病文学と朝鮮人~」では、創作を通じ希望や連帯を希求し、抵抗としての文学活動を展開した朝鮮人元患者らの詩を復刊した詩集「いのちの芽」から紹介していく。(書き手の名前は詩集に掲載された日本名表示のママ)
国本昭夫 1926年・朝鮮全羅南道生まれ。4歳の時に日本へ渡り、41年に多磨全生園に入園。43年に故郷に戻るが、その後再入園。50年に詩誌「灯泥」創刊。
幼な笑みよ
いもうとよ
私の胸の中に住む幼な顔よ
お前は
涙を流し私がふる里を旅たった日を
おぼえているだろうか。
どんよりした駅のホームで
父や母と
何を語り合ったか
知っているだろうか。
一と晩中 机にもたれ
私が何を書いていたか
知っているだろうか。
別れの道で
何も知らずおどおど泣いていた いもうとよ。
私の胸の中に住むお前よ
いつもあどけない幼な顔よ
お前の胸の中に
私の貌がどのように映っていた事か。
ふたりが楽しく小川に遊び
ぬれながら家に帰った日
お前は母にしかられ
夜ぴて泣いた。
暗い部屋でふたりは頭と頭をすれ合せた
あの時の
ほほえみよ。
幼な笑みよ。