合唱曲「生きる」/李佳也
2023年03月31日 08:56 それぞれの四季 論説・コラム谷川俊太郎の素晴らしい詩「生きる」には合唱曲があるのをご存知だろうか。
「生きているということ/それはのどがかわかくということ/木漏れ日が眩しいということ…」
命を温かく見つめる詩のイメージに反し、巨匠・三善晃が作曲した合唱曲は一言で、重い。生きていくということは、喜びと共に悲しみをまとうものだとでもいうような、そんな気がしてくる。
確かに、生きていると、人それぞれが色んな痛みや悲しみをまとう。皮肉にも人間は悲しみをまとうほど、人に優しくなれる生き物かもしれない。元気に笑っているあの人も、私のような悲しみや生きづらさを持っているかもしれない、と立ち止まることを知るからだ。
パートナーが28歳のとき重い病を宣告されてから、6年。すべてが妬ましく思えて当前なのに、かれは変わらず、強く、優しい。いつも他人を優先して生きてきたかれが、やっと自分のために生きている、と誇らしく話してくれた。
合唱曲「生きる」は、その重さと愛しさを確かめるかのように、”いのち”という言葉を繰り返しながら終わる。
「人は愛するということ/あなたの手のぬくみ/いのちということ」
かれが握り返してくれる手は、今日も力強く、あたたかい。優しいあなたと、大好きなあなたと、これからも、笑ったり泣いたりしながら、共に生きる。
(大阪府在住、元朝鮮学校教員)