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当事者への想像力/徐麻弥

2023年03月10日 08:00 それぞれの四季 論説・コラム

先日、国会でなされた、育休・産休中の学び直し支援がキャリアアップにつながるという「育休中にリスキニング」発言が問題になった。

私は第一子を妊娠した時、資格取得のために通信制の大学に在学中だった。当時は、子育てしながらも資格を取れるだろうと高を括っていた。しかし、産後早々に音を上げた。細切れの睡眠、命を預かる緊張感。資格を取ったところで、その仕事と育児を両立するのは難しいと思い、退学した。子育てがこんなに過酷で、身動きがとれなくなるなんて。これまでの己を心から悔いた。

当事者になり気付くことは、他にもある。

昨年に引っ越し、日本学校出身である私の子どもが、ついに朝鮮幼稚園に入園した。園までは車で送迎しているが、家から駐車場までは少し距離がある。その道中でご近所の方々と顔見知りになっていったが、「どこの幼稚園?」と聞かれた時、一瞬答えに詰まった。とっさに下の子が通う日本の保育園の名前を答えた。

情けなかった。私自身、本名宣言してからこれまで、民族名を名乗る時には一度もためらわなかったのに。次聞かれた時には、堂々と答えるんだ、と自分に言い聞かせた。

「リスキニング発言」に怒りながらも、自分の想像力がいかに足りていないかと反省する昨今。同時に、当事者への想像力を働かせることがどれほど大切か、実感する日々である。

(山口県在住、朝鮮学校保護者)

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