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〈本の紹介〉母親になって後悔してる/オルナ・ドーナト著、鹿田昌美訳

2023年01月03日 10:54 文化

タブー視される「常識」にメス

新潮社。03-3266-5111。本体2200円(税込)。

「もし時間を巻き戻せるなら、あなたは再び母になることを選びますか?」

本書に登場するのは、この問いに「いいえ」と答えた23人の女性たち。イスラエルの社会学者であり社会活動家の著者が、女性たちへのインタビューを通じて、これまでタブー視されてきた「母性神話」にメスを入れた。

著者がインタビューに踏み込んだきっかけは「母親は子どもを愛している」「母親であることは幸せだ」という概念が社会に浸透し、母になったことへの後悔が「許されない」現状に疑問を抱いたこと。本書では母親になったことで生じる偏見などにも切り込んだ。

インタビューの対象は20~70代と幅広い。子どもを産んだ経緯も、母としての苦しみを感じる理由もまた一様ではない。

かのじょらが母としての苦しみを感じる理由のひとつは、劣悪な子育て環境だ。貧困な家庭や、パートナーの子育て参加率が著しく低いことがあげられる。そんなかのじょらの多くは、母親であることと子どもへの愛情を別のものと認識している。過重な苦労を強いられるが故に「子どものことは愛しているが、もしも時間をさかのぼれるとするならもう一度生むことはない」と話すのだ。

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