公式アカウント

人道的観点で遺骨の早期返還を/「浮島丸」爆沈事件、各地の市民団体が国へ要請

2022年12月20日 11:30 歴史

日本の敗戦による植民地支配統治の終焉から6日後の1945年8月21日、青森県下北地方で鉄道建設などに従事させられていた朝鮮人労働者と家族ら約3700人は、祖国へ帰るため大湊港で旧日本海軍輸送船「浮島丸」に乗り込んだ。同胞たちを乗せた「浮島丸」は、同月22日に釜山に向けて出航。しかし航行途中で進路を変え、同月24日に舞鶴湾下佐波賀沖で突然爆発し、真っ二つに折れて沈没した。この爆沈事件によって549人(政府見解)という多くの命が奪われた。それにもかかわらず、日本政府は今日に至るまで、被害者や遺族に対する謝罪・賠償はおろか、犠牲者数や乗船者数などの真相究明すら行っていない。事件から77年が経つ今日にも、280体の遺骨が東京・中目黒の祐天寺に眠っている。遺骨の本籍は、朝鮮半島南部が275体、北部が5体となっている。

19日、「浮島丸」爆沈事件の真相究明と追悼行事などを行ってきた東京、京都、青森の市民団体が、人道的な観点から犠牲者の遺骨返還を早期に実現させるため、厚労相に対して「外交ルートを通じた協議」を求める要請書を提出した。要請後、厚労省会見室で記者会見が行われた。

今回の要請活動に携わったのは、「朝鮮人戦争犠牲者追悼会」(東京)、「浮島丸殉難者を追悼する会」(京都)、「浮島丸下北の会」(青森)。3団体はこれまでも連携を持ちながらそれぞれの活動に取り組んできたが、「死ぬ前に遺骨を祖国に迎えたい」という高齢化した遺族の切実な思いと、それを報じた新聞記事(今年8月)を受けて、遺骨返還の早期実現に向けて合同で要請活動を行うことを決めた。3団体による厚労省への要請活動は今回が初めて。

要請活動では、市民団体の代表らが加藤勝信厚生労働大臣宛の要請書を同省担当者らに手渡した。

要請活動では、市民団体の代表らが遺族の心境を代弁しながら、今回の要請に至った経緯を説明し、加藤勝信厚生労働大臣宛の要請書を同省担当者らに手渡した。担当者は「遺骨の返還は、厚生労働省としても非常に大切なことだと肝に銘じている」とし、「今後も人道的な観点から、可能な限り早期に遺骨をお返しできるよう、外務省と連携しながら協議を進めていきたい」と語った。

要請後の記者会見では、3団体の活動や代表らの思いが語られた。

「浮島丸下北の会」の村上準一会長は、今回の要請活動に寄せたメッセージで、「浮島丸」爆沈事件は「戦後、民主主義と人間の尊厳に重きを置く時代において異例の事態」だと指摘。過去の過ちを二度と繰り返さないために、「浮島丸」の出港地であるむつ市と連携し、▼追悼集会の継続、▼国内や国外の諸団体との交流、▼平和学習や啓蒙活動に取り組んでいきたいとした。

記者会見では、3団体の活動や代表らの思いが語られた。

つづいて発言した「浮島丸殉難者を追悼する会」の品田茂会長は、会の活動や舞鶴市民による「浮島丸」事件犠牲者追悼の歩みについて触れながら、自身が舞鶴市の郷土資料館で戦争引き揚げに関する展示会に携わっていた時の思い出を回想。その上で、舞鶴には「引揚者の喜び」だけでなく、「浮島丸」爆沈事件によって犠牲になり「故郷に帰ることのできなかった人々の悲しみ」が今も残っていると述べ、遺骨の早期返還のために力を尽くしていきたいと語った。

Facebook にシェア
LINEで送る