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“遺骨は命であり尊厳”/北海道で歴史掘り起こす、「笹の墓標」巡回展東京

2022年10月21日 13:32 歴史

5日から13日にかけて東京・築地本願寺で催された「笹の墓標」巡回展は、延べ1000人の来場者が訪れ話題を呼んだ。なかには「朱鞠内の強制連行の歴史を初めて知った」という人も少なくなかった。関係者は「歴史を知り、広め、繋げていく」ことの重要性を語る。

「遺骨は人の命であり歴史を語るもの。遺骨返還はまさに命を届ける作業といえる」。

浄土真宗本願寺派一乗寺の住職であり、NPO法人「東アジア市民ネットワーク」の代表を務める殿平善彦さん(77)が来場者に語り掛けた。

開催期間、巡回展ではさまざまなイベントが企画されていた。10日、「死者の声を聞く―強制労働犠牲者の遺骨発掘」をテーマに講演を行った殿平さんは、北海道で強制連行の歴史を掘り起こし、伝える活動について話した。

殿平さんが地元、北海道での朝鮮人強制労働について関心を寄せるようになったのは1976年の春。深川市に住む在日朝鮮人の証言を聞いたことがきっかけだった。

「お前たちが聞くなら話す」。そういって重い口を開いた在日朝鮮人は、過酷な労働やリンチ、脱走、自殺未遂など、強制労働に関する「衝撃的な証言」の数々を残したという。「北海道の隠された歴史を掘り起こさなくては」。強制労働体験者から初めて聞いた証言は、かれを突き動かした。

北海道・朱鞠内では、鉄道工事やダム建設工事により2500人以上の強制労働犠牲者を生んだといわれている。70年代以降の調査によると、そのうち朝鮮人犠牲者は200人以上にのぼるとされるが、遺骨や位牌は遺族に返還されていなかった。

証言を聞いた後、殿平さんは偶然にも「真宗大谷派光顕寺」に強制労働犠牲者の位牌が保管されていることを知り、またその周辺に遺体が埋葬されているという情報を耳にした。同時に、寺内からは戦前の「埋火葬認許証」が見つかり、ダム工事と鉄道工事に従事した115人分の名前と本籍地が明らかになった。その中には、15人の朝鮮人犠牲者がいたという。

「国家と企業には、遺骨を遺族へ届ける義務がある。しかしそれを怠っている現状では、民間の力での遺骨返還が求められていると感じた」という殿平さんらは、遺骨の返還に向け、「認許証」を基に朝鮮人犠牲者の本籍地へ手紙を出した。

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