〈ミュージアムで感じる朝鮮〉part1・高麗美術館 in京都


あつまれ!朝鮮王朝の動物クリム展

朝鮮に出会う

市バス「加茂川中学前」停留所でバスを降り、美術館へ行く道に可愛らしい案内板があった。

歴史情緒あふれる街並みが広がる日本有数の観光地・京都。この地で朝鮮半島の文化を存分に堪能できる場所がある。京都市北区の高麗美術館だ。多いときで、年間7千人から8千人の来場者が訪れるという同館では現在、「あつまれ!朝鮮王朝の動物クリム展」(~21日)と題した展覧会が催されている。

1988年の開館以来、「日本で唯一の朝鮮半島専門美術館」として、所蔵する約1700点の美術品を展観してきた同館で、動物にテーマを限定した展示は初の試みだ。

今月21日まで「あつまれ!朝鮮王朝の動物クリム展」が催されている。

済州島の石像・トルハルバンが両脇を固める正門を通り、館内へ足を踏み入れると、約70点からなる愛らしくユーモラスな作品群が出迎えてくれた。

朝鮮の建国神話である「檀君神話」に虎や熊が登場するように、「古来より朝鮮半島では、自然の中で動物と共存し、かれらが暮らす山を神の象徴として信仰して、動物たちから自然との調和・共存の知恵を学んできた」(会場の説明版より)。

朝鮮時代の動物のモチーフ一覧

展覧会は、朝鮮王朝時代(1392-1910)の屛風や陶磁器、家具や刺繍など、動物をモチーフにした美術作品を紹介することで、当時を生きた朝鮮半島の人々の「動物たちへの畏怖と愛着、自然との共存・共生の願い」といった精神世界に接近した。

同館の代表理事を務める鄭喜斗さん(62)は、今回の展覧会を準備しながらわかったことがあるという。

「この時期、家具や壺、刺繍など朝鮮に伝わるものは共通して動物が描かれているが、日本の薩摩焼、伊万里焼などにはそれがほとんどない。絵画にしても、動物が最も描かれているのは朝鮮半島伝来のものだ」

朝鮮語で絵を意味する「クリム」。同氏によれば、家具や壺、刺繍、絵画などに描かれた動物の「クリム」には、一つひとつに意味があるため、どんな意味が込められたのか、動物の種類や構成などから探るのも今展覧会の見どころの一つだろう。例えば「粉粧彩色長生文三層チャン」(朝鮮時代20世紀頃)。

さまざまな動物が描かれた「粉粧彩色長生文三層チャン」

「チャン」は日本でいう箪笥に該当する家具で、上から順に鶴、龍、鹿、虎、魚、水鳥、亀とさまざまな動物が細やかでカラフルに描かれている。これは、朝鮮時代後期に広く浸透した「十長生」という朝鮮独自の文様で、天・地・水の三つの世界から成り立つ世界観を表すとともに、健康長寿への願いが込められたもの。「面白いのは、朝鮮では18~19世紀にかけて、たくさんの家具や美術工芸品でこのような文様が共通して使われていたことだ」(鄭さん)。

「文化交流こそ政治的なひずみの解決につながる」。この鄭さんの言葉は、日本で朝鮮文化を発信する高麗美術館の存在意義を物語っている。

今年の夏の終わりはぜひ、朝鮮に出会える高麗美術館へ―。

(韓賢珠)

【見どころはココ!】

識者メモ・白凛さん(在日朝鮮人美術史研究者)

たくさんの動物を美術作品の中に見ることのできる楽しい展覧会です。動物を見つけたら、その動物に込めた人々の願いも確認してみてください。描き手の視点が真上なのか、真横なのか、遠くから眺めているのかも注目ポイントです。屏風は正面から、そして斜めからも見て、見え方の違いを楽しんでください。さらに動物の形の単純化にも注目してみてください。私はコウモリの造形に気が付いた時、思わず「おお!」となり、とても嬉しかったです。

施設情報

  • 開館時間:10時~16時半(毎週水曜は休館、現在開館時間を短縮中)
  • 住所:京都市北区紫竹上岸町15番地
  • 問合せ先:075-491-1192
  • アクセス:市バス「加茂川中学前」下車 徒歩約1分
  • 入館料:一般 500円、大高生 400円、中学生以下無料