「花ぎらい」の裴奉奇さん
2022年05月09日 15:44 取材ノート 論説・コラム日本軍性奴隷制被害者である裴奉奇さんが自身の被害を告発して、今年で45年を迎える。
戦時中、日本に連れてこられ、祖国解放後も沖縄でひとり暮らしていた裴さん。17年のあいだ裴さんに寄り添い続けた金賢玉さん(元総聯沖縄県本部活動家)には、鮮明に記憶するひとつの思い出がある。
晩年、裴さんは沖縄県本部の事務所によく顔を出していた。事務所の近くには花屋があり、金さんはよくそこで花を買っていたのだが、隣にいる裴さんは「花はきらい」と言っていつも顔をしかめていたという。
事務所にも金さんが育てていたたくさんの花があった。「きらいきらいと言いながらも『大きくなったねぇ』なんてこぼす時もあった」と、金さんは笑いながら「花ぎらい」の裴さんを懐古する。
裴さんが亡くなってしばらくたち、金さんがその花屋を偶然通りかかったある日、店主が声をかけてきた。